会場に行けない人の権利を聞いたら、
会場に来た人の話が返ってきた!
会場に行けない人は、その場で交わされている区政の議論を、どうすれば知ることができるのでしょうか。
10月14日の決算委員会で、審議会等のオンライン配信について質問しました。
障害や病気などで会場に行けない区民の、情報を得て区政に参加する権利を、区はどう保障するのか。
ところが、条例の理念について企画課長が示したのは、会場に傍聴に来た人同士の情報保障を例にした説明でした。
会場に行けない人の権利を聞いたら、会場に来た人の話が返ってきたのです。
会場に行けないのは、誰にでもあること
子育てや介護で家を離れられない人。仕事と開催時間が重なる人。移動に負担のある高齢者。子どもたちにとっても、決められた時間に会場へ行くことが簡単とは限りません。
会場に行ける人は、その場で議論を聞けます。一方、中継のない会議では、行けない人は議事録の公開を待たなければなりません。
区政を知りたいという気持ちは同じなのに、会場に行けるかどうかで、情報を得る機会に差が生まれています。
この差をどう縮めるのか。それが、今回の質問です。
文京区には、区民が傍聴できる会議が数多くあります。教育、福祉、まちづくり、環境など、私たちの暮らしに直結する議論が行われています。

これだけ多くの会議が公開されているのに、会場に行けない人は、その議論を同じ時点で知ることができない。この問題を、区はどう考えているのでしょうか。
条例にない「同じ環境下」という前提
障害のある人の情報保障について、文京区は自ら条例を定めています。
基本理念は、可能な限り、障害特性に応じて情報を得る手段を選べること、障害のない人と同じ内容の情報を同じ時点で得られることです。
ところが、企画課は、条例の担当部署とも確認したうえで、第3条第1号・第2号は、いずれも「同じ環境下」で情報を得ることが求められる、という趣旨の解釈を示しました。
具体例として挙げたのが、会場に来た人同士に差が生じないようにすることでした。
そもそも、条例には「同じ環境下にいる場合」という条件はありません。
障害によって、会場に来ること自体が難しい人もいます。同じ会場にいることを前提にした説明では、その人たちへの保障が抜け落ちてしまいます。
会場に来られない人こそ、情報を得るための別の手段が必要です。区は、情報を得る権利の保障について、認識を問い直す必要があります。
困っているのは、質問している私ではありません
企画課は、中継を区民が情報を得る機会の一つと認める一方、個人情報の保護、委員の発言のしやすさ、機材の設置などを課題に挙げました。
さらに、企画政策部長は、会場に来られない人への「合理的配慮」としてどのような方法があるのか、本当にインターネット中継でなければ解決できないのかも含めて検討する、という趣旨の答弁をしました。
つまり、部長は、会場に来られない人の情報保障が問われていることを認識していたのです。
しかし、中継に代わって、同じ内容の情報を同じ時点で得られる具体的な方法は示しませんでした。
代わりの方法も示さずに、中継でなければならないのかと問い返す。それで、区民の情報を得る権利を保障できるのでしょうか。
正直に言えば、部長の答弁には、こんな思いも頭をよぎりました。
「野党からの提案だから、できない理由を並べて、あきらめさせようとしているのではないか」
今回に限らず、できない理由ばかりが説明され、どう実現するかという議論に進まない答弁や対応を、これまでも繰り返し体験してきたからです。
しかし、困っているのは、質問している私ではありません。
情報を得る機会が限られている区民です。
区には、その区民の姿が見えているのでしょうか。
誰が質問したかにかかわらず、区民が直面する問題に真正面から向き合ってほしいものです。
そもそも、すでに傍聴が認められている議論を、オンラインでも伝える。なぜ、それほど難しいのでしょうか。
個人情報の保護などへの対応が必要だとしても、それが中継できない理由になるとは、答弁を聞いても納得できません。
これまでのやり方を変えることへの抵抗が、区民の権利より優先されているように映ります。
できない理由を説明している間にも、情報を得る機会の差は続いています。
私は、そのことへの危機感が伝わってこない区の姿勢に、強い憤りを感じます。
お願いしなくても、情報を得られる環境へ
部長の答弁を受け、私は、必要なのは「基礎的環境整備」だと問い直しました。
必要な人が、その都度、事情を説明してお願いする。それだけに頼る仕組みでは、情報を得たい人に負担がかかります。
オンライン配信や録画、字幕、読みやすい資料などをあらかじめ用意し、区民が自分に合った方法を選べるようにする。
行政が、障害のある人もない人も情報を得られる土台を整える。
そのうえで、一人ひとりの障害特性や状況に応じて、必要な合理的配慮を行う。
国の基本方針でも、合理的配慮は環境整備を基礎として行うものとされています。
部長は、会場に来られない人への合理的配慮を検討すると答えました。
しかし、区として、情報を得られる環境をあらかじめどう整えるのか。その視点が答弁からは見えてきませんでした。
審議会等のオンライン配信は、区の優しさや思いやりで行うかどうかを決める問題ではありません。
情報を得る権利を保障する、人権の問題です。
障害のある人が直面する壁を取り除くことは、子ども、高齢者、子育てや介護をしている人、働く人など、多くの人が情報を得やすい環境にもつながります。
すでにある中継を、次の一歩へ
実は、文京区でもオンライン中継は始まっています。
基本構想推進区民協議会では、昨年度の試行を経て、10月14日から正式にオンライン中継を実施するとの答弁がありました。
ただし、区の審議会等で中継されているのは、この協議会だけ。録画配信や字幕もまだありません。
生中継を見る時間が取れない人には録画が、音声を聞き取りにくい人には字幕が、情報を得る助けになります。
すでにある中継を他の会議にも広げ、録画や字幕など、利用できる方法を増やしていく。
「どう実現するか」という答えを、区には示してほしいのです。
区政の情報は、区民に共有されるべき大切な財産です。
情報を知らなければ、何が問題なのかを考えることも、意見を伝えることもできません。
会場に行けるかどうかで、区民の知る機会に差があっていいはずがありません。
誰もが情報を得て、区政に参加できる文京区へ。
引き続き、改善を求めていきます。
参考資料
文京区障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通の促進に関する条例 第3条・第4条
障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 第2の3(3)環境の整備との関係(内閣府)

会場に来た人の話が返ってきた!

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