新型コロナウイルス休校~文京区の対応で問われる様々な問題点
目次(クリックすると移動します)
- ◆ 文京区立小中学校の一斉休校に伴う、学校での預かりの内容
- ◆ 実際、何人の児童生徒が利用しているのか? 各家庭や子どものニーズに応えられているのか?
- ◆ なぜ、学校に行って申請する方法一択しかないのか?
- ◆ 実際にフェアキャストで保護者に配信された「原則」の文字が区のHPにはない!?
- ◆ 今の対応では「取りこぼされる」子どもたちが・・・
- ◆ 「小学4年生以上の通常学級在籍児童にも対応の拡大を」の要望に対する区の答弁
- ◆ 休校中、家庭頼みの「自宅学習」では、教育機会の格差を広げてしまう
- ◆ ネットがない家庭の子どもにも「教育を受ける権利」「学びの保障」を
- ◆ 「給食が命綱の子どもへの給食提供を」の要望に対して区はゼロ回答
- ◆ 緊急時のアクションは「迅速に」が原則、改善を重ねていくのも「迅速に」
- ◆ お困り事やご意見を聞かせてください
◆ 文京区立小中学校の一斉休校に伴う、学校での預かりの内容
保護者の就労や病気等により、どうしても自宅等で過ごすことが困難な育成室(学童保育)に入室していない児童生徒を対象として、学校で預かっています。
以下は、3月2日 文京区教育委員会から保護者に一斉配信されたフェアキャスト(登録制の保護者向け一斉メール配信ソフト)の内容です。
2020年3月2日/文京区教育委員会からの通常連絡
【本文】
臨時休校にご協力いただきありがとうございます。休校期間中の対応について次のとおりお知らせいたします。
1 保護者の就労等により、どうしても自宅等で過ごすことが困難な、児童生徒を対象として、学校での受け入れを行います。対象は、小学校1〜3年の児童及び小・中学校の固定の特別支援学級に通う児童・生徒です。
各学校に申請書を用意しますので、ご確認の上、必要があれば各学校にお申し込みください。申請書の受付は、原則3月2日(月)〜5日(木)とし、受付時間は午前8時30分から午後5時までとします。
なお、育成室に入室されている児童は、育成室をご利用ください。
2 児童・生徒の生活状況、自宅学習について確認指導するため休校期間中に各学年1日程度、臨時登校日を設けます。日時は、後日学校からお知らせいたします。
3 状況の変化等緊急の場合は、フェアキャストにより速やかにご連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
◆ 実際、何人の児童生徒が利用しているのか? 各家庭や子どものニーズに応えられているのか?
3日に登校した児童・生徒は38人。4日は99人、5日午前で122人です。
ちなみに、文京区立小学校20校の1年~3年生、および特別支援学級の1年~6年生、区立中学校の特別支援学級1年~3年生までの生徒数合計は、4,921名です(令和元年5月1日現在)。預かりの対象となるのは、ここから育成室の在籍児童=約1,600名を引いた約3,300名で、このうち、保護者の就労や病気等により、どうしても自宅等で過ごすことが困難な子どもで、かつ、申請した家庭の子どもが預かりの対応を受けられることになります。
申請書を各学校まで取りに行き、申込んでからでないと利用ができない仕組みが、ハードルになっていることもあるかもしれません。
「原則」5日までの申し込み期間内に、各学校まで申請書を取りにいく時間を持てる人ばかりではありません。
なぜ、学校まで取りに行かなければならないのか???
◆ なぜ、学校に行って申請する方法一択しかないのか?
「原則」5日までの申し込み期間になっているものの、あえて「原則」と書いていることから推測すると、困り度を伝えていけば、柔軟に対応してくれると思います。役所の中では「原則」と書いているときは「あくまでも原則で例外もあるよ」ということだからです。
ただし、それはあくまで役所の中の常識であって、保護者にはわかりにくく、「5日まで」と書かれていることで、あきらめてしまう方も少なくないのでは、と想像します。
先生たちが子ども達にかける「相手の立場になって行動しましょう」という言葉に沿って考えれば・・・
「就労」している等の保護者の立場になれば、文京区HP上から申請書をダウンロードし、学校にFAXで送るなどの選択肢を提供する方法もあったのではないでしょうか。
さらに、申込み受付期間は、あくまでも「原則」として設定したものです、と書き添えることで、どれほど保護者は安心するでしょう。もったいないことです。
しかも、文京区教育委員会は、教育指針案の中で「Society5.0における社会や科学技術の進展に貢献できるよう、ICTやAI等の先端技術を活用した学びに必要な基盤の整備」を掲げています。文京区としてもICT化を推進するとしています。
文京区のこの教育指針の方向と、申請書のダウンロードの選択肢すらない施策は、整合性もとれません。が、合理的な説明はない状況です。
感染症予防の徹底なのか、あえて学校に申請書を取りに行くというハードルを課して、「利用者を増やしたくない」という意図を感じざるを得ません。
◆ 実際にフェアキャストで保護者に配信された「原則」の文字が区のHPにはない!?
そもそも、「原則」という言葉も、実は保護者向けのフェアキャストにのみ記載されているものです。区のHPに掲載されている「保護者の皆様へ」からはじまるページに掲載されている学校対応のPDFには「原則」の言葉は見当たりません。各校の校長への文章にも「原則」の文字はありません。
「原則」が、ないということは、申込み期間(3月3~5日)を過ぎて保護者が申し込みをしてきても、受け付けなくてもよい「大義名分」ができたということです。
どれが真実なのか? あくまでも保護者向けフェアキャストにかかれた「原則」に基づくべきです。教育委員会には確認してまいります。
▼ 区のHPに掲載された「保護者の皆様へ」のPDF
https://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0194/3774/202032174619.pdf
▼ 3月2日付で各校長宛に文京区教育委員会から出された通知
◆ 今の対応では「取りこぼされる」子どもたちが・・・
小学校3年生までの子どもや、特別支援学級に在籍する子どもに限らず、小学4年生以上でも、留守番が困難、自宅で丸一日を過ごすことが非常に困難、大人の見守りがない中では安全が確保しづらい子どもがいます。
例えば、通常学級に在籍している子どもの中にも、特別支援教室「学びの教室」「アドバンスルーム」に通う等の障害のある子はいます。学校に登校することで虐待の危険を軽減できる家庭もあります。しかし、今回、そうした小学4年生~中学3年生のお子さんへの「支援」はなされていません。今回の区の対応から「排除されている」と言っても過言ではありません。
文京区はこれまで、どの子も「教育制度から排除されることがないよう」に非常勤職員の配置などに尽力して来ています。非常勤講師等も、健康に問題がなければ自宅待機ではなく通常通り学校に来ており、そのことで、賃金の支払いがされます。つまり、非常勤講師も含め、対応する先生たちは学校にいるのです
「保護者の就労等により、どうしても自宅等で過ごすことが困難な」小学4年から中学生まで対象を広げたところで、新たな予算は発生しないのです。人材確保が難しいといった課題もまったくありません。なぜ実施しないのか? 誰が拒んでいるのか? 誰かに配慮して対象を制限しているのでしょうか???
障害者の団体が、一斉休校要請で「障害のある子どもと家族に深刻な問題をもたらす」として「緊急声明」を出しています。
【緊急声明】障害のある子どもと家族の健康と生活を守るために一律の休校要請は撤回を 2020年3月2日 全国障害者問題研究会常任全国委員会 http://www.nginet.or.jp/news/opinion/20200302_statement.html
◆ 「小学4年生以上の通常学級在籍児童にも対応の拡大を」の要望に対する区の答弁
3月2日(月)に開催された文教委員会では、小学4年生以降も、通常学級の子どもたちについて対応を広げるように求めましたが、「育成室に準じて決めた」という、まったく理由にならない理由の答弁しかありませんでした。
支援を必要とする家庭が、「相談してもいいんだ」「力を貸してもらえる」「預かってもらえる」と、家庭だけで抱えずにすむよう、各学校が個別に対応することをフェアキャストで流し、教育委員会が力になることの周知に努めてほしいと思います。
◆ 休校中、家庭頼みの「自宅学習」では、教育機会の格差を広げてしまう
区は、休校期間中、学習については「教科書やドリル、学習教材等をもとに自宅学習」することを保護者に求めています。
ですが、家庭学習を支援できる家庭ばかりではありません。福祉部が実施する家庭の経済的な事情により学習塾に通えない等の子どもたちに対して行われている学習支援事業との連携を緊急で行うことが明らかになりました。
しかしながら、それでも、子どもの「教育機会」を保障する上で、格差が広がってしまう危機感を覚えます。
例えば、子どもの中には、塾ですでに小学校6年間の学習を学び終えて卒業する子もいるでしょう。一方、本来なら3月2日から勉強するはずだった勉強を教わらないまま卒業し、中学校の入学となる子が出てくるでしょう。
「学ぶべきことを学べていない」子どもたち。教育委員会も、塾を前提にするわけではないはずです。3月2日から約3週間の休校中にできていない学習を、いつどこでどのように保障していくのでしょうか。引き続き、すべての子どもへの「学びの保障」を求めていきます。
◆ ネットがない家庭の子どもにも「教育を受ける権利」「学びの保障」を
例えば、文京区教育委員会は、家庭学習として家庭のパソコンで、eライブラリーに接続することで自宅学習を進める選択肢を示しています。
しかし、これは、家庭にインターネット環境があることが前提です。インターネット環境がないお子さんはどうすればいいのでしょうか。
登校している子どもは使えるようにするとのことですが、それも小学校3年生までと特別支援学級に在籍する子のみです。
インターネット環境がない家庭の子どもは、「保護者の就労等により、どうしても自宅等で過ごすことが困難で、育成室(学童保育)に入室していない児童生徒」等の要件に含めて、「教育を受ける権利」を保障し、学校で預かってくれるのでしょうか。教育委員会は、まだそこまでは想定していません。想定できていません。
子どもたちの「学びの保障」をどのようにするのか、速やかに提供していくことを、要望してまいります。
◆ 「給食が命綱の子どもへの給食提供を」の要望に対して区はゼロ回答
他にも、「給食」が一日の食事の中で命綱のような重要な位置づけになっている家庭もあります。経済的な理由のみならず、保護者の就労等で手がかけられない家庭もあるのです。そういった観点から、文教委員会で、登校した子どもたちへの給食の提供についての区の考えを問いましたが、給食を提供することに関してはゼロ回答でした。以下のとおり、給食費の補助を行うとのことです。
区立小・中学校休校期間中の給食費の補助を以下のように実施されます。
対象 要保護・準要保護・学校給食費補助(ひとり親家庭・特別支援学級)の認定世帯
補助額 一日あたり500円
対象期間 令和2年3月2日から修了式前日まで
申込み 不要
支給時期 区立小中学校在籍者は 3月末
所管課 教育推進部学務課 03-5803-1295
◆ 緊急時のアクションは「迅速に」が原則、改善を重ねていくのも「迅速に」
緊急時の対応は、迅速な決定と迅速なアクションが肝心なのは、その通りだと思います。しかし、迅速に打った手立てが最適でなかった場合には、「改善」して「最適化」していくのも、また迅速に行わなければならないはずです。
区は、今回の緊急対応から「取りこぼされてしまう」子どもや家庭が存在することを、残念ながら事前に想定できなかったのかも知れません。しかし、議会で議員が区民の代理として声をあげている以上、「そういう声は聞いていない」と、一度決めたことに固執するのではなく、緊急に打った施策を最適化すべく次々に手を打っていくのが区の責務だと思います。
◆ お困り事やご意見を聞かせてください
引き続き、議員として区民の立場から強く要望していきますが、みなさんもお困り事等の生の声を区に届けて頂けたら、お一人お一人の声が後押しになると思います。
ぜひ、文京区ホームページの「区民の声」から、学校設置者である文京区長宛に届けてください。
▼区民の声
“新型コロナウイルス休校~文京区の対応で問われる様々な問題点” に対して3件のコメントがあります。
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4月から保育園に預ける予定ですが心配です。制度上、4月末までに復帰しないといけませんが、育休延長したいです。
目黒区品川区などは、それができるようになったみたいですが、文京区では難しいのでしょうか。
内閣府等の方針を踏まえ、文京区でも、新型コロナウィルス感染症の対応のため自主休園し、家庭で保育するために4月に育児休業から職場復帰する予定を延期する場合は、「4月の在園資格」を保証することになりました。
《「原則」の考え方について教育委員会に確認しました》
保護者向け、休校中の預かり対応の情報に書かれた「原則」の対応の仕方について、教育委員会に確認をとりました。
本記事で書いた「新型コロナウイルス感染症対策に伴う休校措置への対策について」の保護者向けの情報が、3月2日付で発信された教育委員会発のフェアキャストと区HP掲載の文書で「原則」の文字があったりなかったりと異なる件についてです。
今回の教育委員会の説明では・・・
「保護者に向けたフェアキャストで流れたとおり」とのことです。
「申請書の受付は、原則3月2日(月)〜5日(木)とし、受付時間は午前8時30分から午後5時までとします。」
「あくまで「原則」であり、個々の事情があることなので、相談してもらえればよい」とのことです。
また、「保護者の就労等により自宅等で過ごすことが困難な児童・生徒」という対象については、「小学1~3年生」「特別支援学級在籍・小学1年生~中学3年生」としているが、「学校に個々に相談してくれれば、それ以外の子どもたちに対しても適切に対応していく」とのことです。
・・・であれば、せっかくの「子育て支援」です..
伝わらなければもったいない!ぜひ、フェアキャストで周知を図り、必要な家庭に届くように要望しました。
ちなみに・・・
ある小学校では、「原則」が申込期日ではなく、申込受付時間にかかっていましたが、文京区教育委員会の対応方針は上述のとおりです。
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対象:
保護者の就労等により、どうしても自宅等で過ごすことが困難な通常学級の児童(1~3年生)・特別支援学級固定の児童(1~6年生)
※申請書(登校理由「就労・病気等」・登校日時)を提出し、事情が確認された児童に限る。
申請期日:
3月2日(火)から3月5日(木) (原則 8時30分から17時まで)
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学校に相談しても、引き受けてもらえない等があれば、教育委員会(教育推進部指導課)なりに相談されてください。私にご連絡頂ければご一緒に考えて対応させていただきます。
けっして、お一人、一家庭の問題ではないことです。