文京区はユニバーサルデザインガイドラインや障害者差別解消法を守るつもりがない!?~答弁で障害者の権利利益侵害への言及を避けた成澤区長
障害は本人に起因するものではなく、人を含めた社会の環境によって障害が生まれるという「社会モデル」の考え方を、区・教育委員会にさらに徹底してもらいたいと考えて区議会一般質問を行いました。
例えば、皆さんは 自分だけ、いつも、他の人の動線とは分け隔てられて遠回りをしなくてはならないとしたら、どう感じますか?
時間もかかります。それが、自分が、車いすを利用する等、エレベーターを利用しなければならないのだから仕方ない、と思いますか?
全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共に生きる社会の実現を目的に施行された「障害者差別解消法」。その障害者差別解消法の対応要領では、障害のある子どもや人に対して「障害者でない者に対して付さない条件を付けること」等を不当な差別として禁止しています。
ところが、文京区が今、進める学校の改築設計では、
- 明化小・柳町小学校の建替えにおいて、主要な出入り口にある階段から遠い位置にエレベーターを設け、エレベーターを必要としない人に対しては付さない「遠回りでの移動」を条件付けています。
- 柳町小・柳町こども園の建替え設計では、小学校・子ども園でエレベーター1機を共有する設計です。子ども園の利用者は、鍵がかかった扉の先のエレベーターを使用する度に、いちいち声をかけて鍵を開けてもらわないと使えません。階段は声をかけることなく誰もが自由に利用できます。ですが、エレベーターを使わなければ上り下りができない人に「声をかけて待つ」という条件を付加しています。
いずれも障害者差別解消法で禁止する「障害でない者に対して付さない条件」をつける不当な差別的扱いに当たると私は考えます。
ちなみに、これまで文京区内の公立小中学校に設置されているエレベーターは、昇降口に近い階段の横などに設置されており、障害の有無で分け隔てしないような動線が確保されています。
「誰ひとり取り残さない」というSDGsの理念からも、なぜ、車いすを使用する子どもや大人が、通常の動線等と別にされるのか、説明責任が求められます。東京都のユニバーサルデザインガイドランでは、「だれでも同じように公平に利用できる施設」を作るチェックポイントとして、「基本的に誰もが同じ動線で利用できる経路となっていること」「誰もが差別感・疎外感を感じることなく利用できるようになっていること」とされています。
文京区はガイドラインを遵守していくつもりはないようです。
▼東京都ユニバーサルデザインガイドライン~チェックポイント「5つの視点」
令和の時代に建て替える学校でありながら、エレベーターを利用せざるを得ない人には「遠回り」をさせる学校を作ろうとしているのです。学校の設置者は区長です。
当事者からは、後付けのエレベーターではない建て替えにおいてさえ、なぜ障害のあるものだけが「遠回りを強いられるのか」「声掛けをするという条件が付加されなければならないのか」と悲しむ声があがっています。
日本の民俗学者であり、差別の本質に迫る著書も多い、学習院大学教授の赤坂憲雄さんの言葉を思い起こします。
根拠があって差別が起こるのではなく、
まず差別が起こってから、根拠が捏造される。
(「内なる他者のフォークロア」赤坂憲雄著 岩波書店 )
そこで、一般質問で説明を求めたところ、成澤区長の答弁は以下の通りです。
<質問~かいづ>
障害者の権利利益の侵害についてお尋ねします。
設置者である区長のお考えをお聞かせください。「車いす等を必要とする人たちが遠回りしても仕方ない」とのお考えであれば、障害があることで「条件付与」をしていない、法に抵触していないという合理的説明を求めます。
<答弁~成澤区長>
学校の改築についてのお尋ねですが、
学校の改築にあたっては、教育委員会において、国の法令並びに、都及び区の条例、指導要綱等関係法規を踏まえた設計を行っております。
また、改築に伴うエレベーターの配置・台数については、バリアフリーの観点から、教室や廊下等の配置とあわせて、施設全体の使いやすさを踏まえた設計を行っているものと認識しております。
なお、エレベーター等の施設利用については、学校及びこども園が丁寧に協議し、運用も含め、利用者への配慮に努めていくものと認識しております。
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ご覧の通り、成澤区長は、障害のある人に対する権利利益の侵害についての見解に関して言及を避けた、と感じざるを得ません。
以下は、一般質問の最後に行った自席からの発言です。
<かいづ>
区長、教育長、ご答弁ありがとうございました。
ただ、年に一度、本会場での一般質問、9回目にして、最も印象に残るほど残念な答弁がありました。
私が存じ上げてきた成澤区長は、議員時代には、憲法、法律や条令等に基づき、真摯に障害のある子どもや家族が抱える課題解決に向けて、所管の部長と激論を交わし、毛細血管が何本切れたかわからないと言われるほどでした。生きづらさを抱える人たちの施策に尽力される姿を、私は目の当たりにしてきました。
しかし、今回のご答弁では、まるで別人のように感じました。
障害者差別解消法では、障害のない人に付さない条件を付けることは「不当な差別的取扱いに当たる」とされ禁止されています。
明化小学校、柳町小学校は、「メインの出入り口から階段を利用する人に対して、車いすを使用する人などは階段から離れたエレベーターを利用する設計になっています。これは、障害のない人に付さない「遠回りでの移動」という条件を付していることになります。
車いすを使用する方々からは、後付けでエレベーターを設置するならともかく、新たに建て直す学校で「遠回りさせられる」ことには怒りや悲しみを覚える、との声が上がっています。こうした声は区長の耳にも届いているかと思います。
質問では、障害者差別解消法で禁止する「不当な差別的取扱いにあたる」のではないかという疑義に対して、区長はどうお考えなのか、法律に照らした上での合理的な説明を求めました。
ところが、区長ご自身の判断なのか、職員が区長へ忖度したのか、本来ならば、「障害者の権利利益の侵害についてのお尋ねですが」という答弁となるべきところ、「学校の改築についてのお尋ねですが」とまったく別の論点にすり替えられての答弁でした。
真正面から「障害者の権利利益の侵害に相当するのかどうか」にお答えがなかったことは残念でなりません。令和の時代です。学校の建替えに限らず、障害のある人だけに条件を付加することのない区政への改革をあらためて要望して終わります。
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最上位に位置付けられる行政計画「文京区基本構想」では、「みんなが主役のまち」を目指し、バリアフリー化の促進やユニバーサルデザインを取り入れた建物・空間の創出をうたっています。障害者権利条約や障害者差別解消法等、関連法規に基づき、より一層のバリアフリー化を進めて行こうとする文京区の最上位の方針です。
どんなに立派な構想を掲げても、それが現実的に区の仕事の仕方や設計の細部まで落とし込まれなければ、一事が万事「まあいいか」とないがしろになってしまい「絵に描いた餅」に過ぎません。
文京区では、現行の基本構想が計画期間の概ね10年を迎えるとともに、3年を計画期間とする基本構想実施計画についても、本年度が最終年度となることから、新たな行政計画として、「文の京」総合戦略の策定を進めています。
今、目の前にある、しかもまだ設計段階にもかかわらず、都ユニバーサルデザインガイドラインに照らして見直すなど、真摯に向き合って考えることを放棄しておいて、次のステップの戦略を策定するようでは、まったく説得力がなく、区民の信頼は到底得られません。「絵に描いた餅」のリニューアルではまったく意味がありません。
ぜひ、みなさんの体験やご意見を聞かせてください。
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11月20日、文京区議会11月定例議会で一般質問を行った全文(質問と答弁の一問一答形式)は以下でお読みいただけます。
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