9月議会一般質問~区長・教育長への質問と答弁(一問一答)

2022年9月7日、文京区議会定例議会で一般質問を行いました。
区長・教育長への私の質問と、それに対する区長・教育長の答弁を一問一答形式にして全文を掲載します。
なお、それぞれの答弁について私が思うところを「海津の考え」として付記しました。
ご興味のあるトピックだけでもご覧いただき、ご意見を聞かせていただけたら励みになります。

目次(クリックすると移動します)

冒頭の言葉

区長が、2007年、区政運営に「透明性の確保」「説明責任」「公平性」「区民参画」の四原則を掲げて初当選されてから丸15年。4期目も残すところあと8カ月です。 

区長は、社会福祉の教科書で「たとえかすかな木漏れ日であっても、日の光が当たらないところに日の光を当てるのが政治の基本」と学び、「本当に困っている少数の人の声を大切にする」ことを政治の基本に据えられています。 

まさに、SDGsが目指す「誰ひとり取り残さない」ということだと、私は理解しています。 

また、私自身、「政治は立場の弱い人のためにある」「声の小さい人のためにある」という考えのもと、政策をチェック、提案してきました。政治のベースは同じであると思っています。 

課題解決型の区政運営を推進する区長。残り8か月で、どのような戦略を立て、「日の光の当たらないところに日の光を当て、本当に困っている少数の人の声を大切にした施策を打ち出していくのか。理想と現状のギャップをどのように埋めていくのか、具体策を伺ってまいります。なお、答弁によっては再質問をさせていただきます。

子ども応援臨時支援金 決定までの過程を記録した文書がない!?

民主主義を機能させるために一番重要なのは、結果が〇か×かではなく、なぜ、その結果に至ったのか、文書記録で残し、誰もが後から検証できるようにすることです。区長自身「政策立案や実施の方針等に影響を及ぼす過程」の文章を作成する公文書管理法の趣旨を踏まえ、区民に説明する責務を果たされようとしています。 

しかし、現状はなんの記録も残っていない。驚くべきことが情報公開でわかりました。
一般会計から約12億円も支出する予定の「子ども応援臨時支援金」に関してです。 

記録が「不存在」とのことなので、どのような根拠をもって3万円の金額を設定したのか、政策目的はどのようなものなのか、何もわかりません。区長が掲げる4原則からも大きく外れます。 

トップダウンで区長が予算編成権を行使されたということでしょうか。 

記録等を実は作成しているが、のちに検証されるとまずいと判断し隠ぺいした。いうことではないと信じています。しかしながら、政策決定過程がわかる文書を作成し、区民に対して説明責任を果たす、という区長が大切にされているところと大きなギャップには、強い違和感を持ちます。 

今回、文書で記録していないということがなぜ、おこったのか。区長はどのように分析し、どのようにギャップを埋めていこうとされるのでしょうか。伺います。

区長答弁

本事業は、長期化するコロナ禍や現下の物価高騰への支援策を9月補正予算で編成するにあたり、国の政策や法改正及び他自治体の状況等を確認しながら、立案したものとなります。 

なお、事業の実施にあたっては、事業を執行する担当課において、文書により起案し、意思決定をしております。 

立案に至る過程については、日々の業務を通して考えをまとめていくものも多くあり、その結果、立案に至るまでの記録や資料等の文書は、特にないことも事実としてあると認識しております。今後とも、適正な公文書管理に努めてまいります。 

海津の考え

「『今後とも』適正な公文書管理に努める。」という答弁に、まず、愕然としました。 

『今後は』ならわかります。しかし、『今後とも』というのは、つまり、立案に至る過程で記録や資料等の文書が特にない状態のこれまでを「良し」としている認識であるわけです。 

区政運営における、「透明性の確保」、「説明責任」、「区民参画」、「公平性」を公約に掲げて当選してから15年。そうしたことを重視するリーダーシップは失せてしまったと思わざるを得ません。 

来年4月には統一地方選があります。成澤区長が5期目を目指すのであれば、区長に初めて立候補したときの「「透明性の確保」「説明責任」「公平性」「区民参画」の四原則に立ち戻るべきです。 

ちなみに、文教委員会(9月16日開催)で、再度、「決定過程の文書がなかったことについて、今後どうするのか」を訊ねたところ、企画部長からは、
「事業の中では、緊急を要するときほど瞬時に判断しなければならない空中戦になることもあり、事業のあり方、大きさで決定過程を文書に残すことについて意を用いていく」との答弁がありました。 

要は、区長答弁の通り、「立案に至るまでの記録や資料等の文書がないことはこれからもあるが、事業の内容で決定過程を残すかどうか気を配っていきます。」ということになります。 

当然、税金を活用する事業である限り、事業決定に至る過程を残すことは区民に対する区の責務であり、区民への説明責任を果たすための基本です。そもそも事業の決定過程を残すかどうかを決めるのが、事業を決定する行政であっていいはずがありません。 

引き続き、公文書管理法の主旨に基づいた文書管理を求めるとともに、区政を監視し、事業の有効性など、当事者のニーズに合っているか、取り残される人はいないか、チェックしていきます。

長引くコロナ禍と物価上昇で生活困窮する人々への支援は?

文京区は理念として「だれもがいきいきと暮らせるまち」を掲げています。 

長引くコロナ禍に加え、食費等の物価高騰で生活や雇用にも深刻な影響が及び、「だれもがいきいきと暮らす」どころか、非正規雇用で働く女性や若者、高齢者の暮らしは悪化しています。見通しの立たない日々に不安を募らせ「死にたい」と訴える方も増えています。高齢者や生活保護世帯の方などは、エアコンが壊れて新たに購入できなかったり、電気代を気にしてエアコンの使用を控えたり、命にも危険を及ぼす暑さの中で過ごされている現実もあります。 

「本当に困っている少数の人の声を大切にする」と明言されている区長ですので、コロナ禍で経済的な困難さを抱える人の声に心を砕かれていると思います。 

日々の暮らしに困難を抱えている人々が増えているという現状と理想のギャップをどのように考えているでしょうか。 

区は、来年1月に「子ども応援臨時支援金」として、障害のない子は18歳未満、障害のある子は20歳未満を対象に、一人あたり3万円、支給することを決定しました。 

この施策自体の是非とは別に、検討プロセスを記録した文書が存在しない以上、その政策目的や数字の根拠がわかりません。 

子育て世帯に対してのみ支援金給付をする政策目的は何でしょうか。 

また、どの部署間の協議で、どのようなプロセスを経て、どのような根拠に基づいて3万円という金額を算出されたのでしょうか。さらには、障害のある児童は20歳未満にした理由は何でしょうか。 文書が残されていないので何もわかりません。具体的に教えてください。 

「だれもがいきいきと暮らせるまち」の理想に照らせば、子育て世帯と同様に、貧困に苦しむ高齢者や非正規雇用の女性や若者等へ応援臨時支援金を支給しない現状は、ギャップを生んでいると言えます。 

例えば、低所得の方々にエアコン設置の助成金を出す場合、生活保護を受けている方でも収入とは認定せずに出来ると厚労省から聞いています。 

経済的に困窮する方が支援から取り残されている現状と区が掲げる理想「だれもがいきいきと暮らせる」ことに、なぜギャップが生じていると分析されていますか。 

ギャップを埋めるために、子育て応援臨時支援金のような給付の検討はされているでしょうか。「だれもがいきいきと暮らせるまち」への期待を経済的弱者が実感できるために何が重要と分析し、、どのようにされていくのか伺います。

区長答弁

区では、「文の京」総合戦略において、将来都市像の実現と基本構想を貫く理念として、「だれもがいきいきと暮らせるまち」等を掲げております。 

これらを実現するために、必要な主要課題を設定し、課題解決に向けた施策を展開しているところです。 

子ども応援臨時支援金については、全ての区民が物価高騰の影響を受ける中で、子育て世帯については、食費や教育費等、家計における支出の割合が特に大きいことに加えて、児童手当法改正による特例給付の廃止の影響も生じること等から、所得によらず、全ての子育て世帯を対象に実施することとしたものです。 

給付金額については、国の給付金や、特例給付の廃止による影響額等を踏まえました。 

また、支援金の対象となる子どもの年齢については、児童育成手当のうち、障害手当は20歳未満を対象としていること等から、同様としたものです。 

なお、生活に困窮している方には、家計が急変し住民税非課税と同様の事情にあると認められる世帯も含め、国による一定の基準に基づき、給付金を支給しております。  

あわせて、離職や廃業等による経済的な困窮に関する相談については、専門相談員を増員するなど、自立相談支援機関の体制強化も図ってきたところです。 

また、介護サービス事業者や障害福祉サービス事業者に対する食材費や光熱費等の高騰に対する支援は、物価高騰等による利用者負担額の増を回避する一助にもなると捉えております。 

さらに、高齢者への支援については、高齢者インフルエンザワクチンの無償化や高齢者見守りあんしんライト事業など、高齢者の健康と安心を守る事業に取り組むこととしており、それぞれの状況に応じた支援を講ずることが効果的と捉えております。 

なお、新たな支援金の給付については、現時点では考えておりませんが、今後とも、国や都の動向を注視するとともに、ニーズを捉え、必要な支援を実施してまいります。

海津の考え

区長は、「子ども応援臨時支援金については、全ての区民が物価高騰の影響を受ける中で、子育て世帯については、食費や教育費等、家計における支出の割合が特に大きいことに加えて、児童手当法改正による特例給付の廃止の影響も生じること等から、所得によらず、全ての子育て世帯を対象に実施することとしたものです」との答弁でしたが、全ての区民の中で、特に子育て世帯の支出の割合が大きいことを、どのような資料を根拠に判断したのか。職員が何もなくて判断するとは到底考えられません。トップ等の強い意向があっての政策で、資料等もなく、決定過程を残すことができなかった、と疑念を抱かざるを得ません。 

深刻な物価高が続く中、区自ら区民の負担軽減策を施し、すべての区民の暮らしを守ろうとする意思は伝わってきません。国や都を言い訳に、区民の現実から目を背けているようにしか見えません。 

経済的に困窮する方や高齢者への新たな支援金の給付を考えない理由が理由になっていません。食材費や光熱費等の高騰による利用者負担軽減のための支援として、学校等の給食費等への支援を行っていることが、児童手当の特例給付の廃止の影響というならば、例えば、年金の支給額が今年4月分から引き下げされた影響については、考慮しないのでしょうか。 

生活に困窮する家庭等にも、同様の支援策を検討すべきことなのは、明らかです。 

今回の、所得によらず、すべての子育て家庭に支援金を給付する政策は、成澤区政15年で初めてです。 

国や都の動向に関わりなく、すべての子育て家庭を支援したように、生活に困窮する家庭等への支援を検討することを改めて求めていきます。

小学生ヤングケアラー15人に1人。きょうだい児の支援が急務

大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている「ヤングケアラー」について、今年4月に厚労省が公表した小学生対象の調査によれば、「世話をしている家族がいる」と答えたのは6.5%で、およそ15人に1人に上ります。 

また、「世話をしている家族がいる」と答えた人のうち、ケアを必要とする家族は「きょうだい」が71%と一番多く、中高生の調査でも同様に、「きょうだい」が最も多くなっています。 

特に、「ヤングケアラー」の一種に挙げられる、障害のあるきょうだいのいる子ども、いわゆる「きょうだい児」の割合が高いと指摘されており、正式な調査結果はまだないものの、人口比でおよそ5%、20人に1人いると推定されています。 

このように健康状態や学校生活などの日常生活に支障をきたしているヤングケアラー、とりわけ「きょうだい児」は、文京区にもいるはずです。 

こうした子ども達への支援の目的は、子どもの状況を的確につかみ、耳を傾け、心を通わせ、結果としてヤングケアラーから脱却し、子どもが希望を持てる具体的な支援をすることです。「相談しても何も変わらない」という「あきらめ」を生まないことが重要です。 

では、文京区の現状はどうでしょうか。 

地域福祉保健計画の中で示された「子どもの育ちと家庭への安心の支援」等でも、障害のある子どものきょうだいがヤングケアラーとなりがちな課題について、何の言及も支援策もありません。 

教育センターが実施する児童発達支援事業「そよかぜ」では、未だに延長保育が実施されず、家庭の自己努力が強いられています。
結果、保護者がみられないときには、きょうだいが障害のある子どもの世話をせざるを得ない状況が生まれています。 

放課後全児童向け事業を障害のある子どもが利用しようとすると、人手が足りない等を理由に断られるケースがあるにもかかわらず、成果・評価の欄にはそうした記載がなく、障害のある子に機会の平等を確保する今後の言及もありません。 

放課後等デイサービスは、文京区の家賃が高い事情からも事業継続が厳しく、事業の質の向上に不可欠な優秀な人材の確保や職員数を増やすための人件費を割くこともままならない状況であり、事業所の数はニーズに応えるにはまだまだ足りません。保護者の中には、事業の質に不安を抱き、家族で介護を担う選択をする人もいます。 

子育て支援計画の冒頭「計画の目的」では、「子どもの視点を忘れずに、子どもの人権を守り、子どもを第一に考えた子育て支援が大切です。」と謳っています。ところが、今述べたように理想と現状にギャップがあるのは明らかです。 

ヤングケアラー、とりわけ「きょうだい児」への支援の強化は、こうした子どもを生み出さないためにも必須であり、今、目の前の問題として急務です。 

虐待をうける確率も高いとされる障害のある子どもを、社会で育てて行く体制の整備は喫緊に取り組むべき課題です。 

所管が具体的な手立てに動かないのはなぜか。区長はどのように現状を把握され、どうギャップを埋めていくのか。伺います。

区長答弁

障害のあるきょうだいを始め、高齢者や病気療養中の家族などに対して、大人が担うようなケア責任を引き受けているヤングケアラーの支援については、関係機関と連携し支援のあり方を検討するとともに、事例を共有し、ニーズ等の分析を進めております。 

しかしながら、関係機関が把握した事例が少ないことから、まずは身近な関係者がヤングケアラーに気づくことから始め、本人や家族の意向を聴き、寄り添いながら必要な支援につなぐ体制を整えてまいります。 

あわせて、障害福祉を始めとする各種のニーズを捉えながら、ヤングケアラーの負担軽減に資する支援について、検討してまいります。 

子ども達が自分らしく生きられるよう、孤立させない社会を目指し、関係者及び地域との連携を強化し、子どもの権利を守る取り組みを進めてまいります。

海津の考え

「ヤングケアラーに気づくこと」がまずとても重要です。しかし、本人や家族が勇気を出してSOSを伝えたとしても、望む具体的な支援につなげられなければ、相談する気を失わさせることにもつながりかねません。ヤングケアラーに気づくことと同様に、早急に支援体制を作ることが重要です。また、ヤングケアラーにさせない予防的支援の施策を急ぐことも言うまでもありません。

教員も子ども自身もよくわかっていない「子どもの権利」

日本が批准する「子どもの権利条約」について、子ども支援専門の国際組織であるセーブ・ザ・チルドレンが今年3月に実施した調査によると、教員の3割が「子どもの権利」の内容を「まったく知らない」「名前だけ知っている」と回答しています。 

こうした状況下において、教員自身が正しく子どもの権利を理解し、学校や学級において子どもの意見を聴き、その意見を取り入れることはもちろん、まずは、子ども自身、自分が持つ権利を知ることが欠かせません。 

  

しかし、学校教育の現状は、子どもの権利条約に関して教科書の中で何らかの記述はあるものの、子どもたち自身が子どもの権利を自分事として十分に学んでいるとは言い難い状況です。 

子どもたちからは、生徒手帳に子ども権利条約を明記してもらいたい、学校や学級に四つの権利を張り出してほしい、との声も聴かれます。 

どのような過酷な状況にあっても、子どもたちは守られ、一人ひとりが尊重されることを、子どもたち自らが身をもって知ることが理想です。 

子どもの権利が、子どものもっとも身近な教員ですら理解できていない現状のギャップがなぜ起きているのか、どのように分析されていますか。また、どのようにギャップを埋めていくか伺います。

教育長答弁

ギャップの要因としては、「子どもの権利」を含め、人権に対する理解の深さの差にあると捉えております。その解消のためには、人権尊重の理念を正しく理解し、実践しようとする態度を更に伸ばすことが必要と考えております。 

具体的には、各学校では、管理職をはじめ、人権教育担当の教員が中心となり、教職員の人権感覚を養い、人権課題についての理解と認識を深めております。「子どもの権利」を含め、様々な視点から人権意識を更に高められるよう研修や周知に努めてまいります。 

また、幼児・児童・生徒においても、身近な事例をとおして人権課題について学び、自らの権利と義務、自由と責任についての認識を深め、自分の人権を守り、他者の人権を守ろうとする意識・意欲・態度を生活の中に生かしていくことができるよう、発達段階に応じた指導を行ってまいります。

海津の考え

教員の人権感覚を養うという目的においては、これまでの研修や周知が必ずしも有効ではなかった、教員の理解が促進されるものではなかった、という視点に立つことが必須です。 

学校現場では、「自由に意見を表明できる」「差別されない」という子どもの権利が、教員の不適切な言動によってないがしろにされています。 

具体的な指導がなされていないという現実を受け入れた上で、研修等を見直し、予防や発生時の対応など、子どもの日常に寄り添った具体的な指導体制を早急に作ることが、子どもの権利を重視し、子ども一人ひとりが尊重される学校生活につながるものです。

児童相談所運営計画案から抜け落ちている「現状の課題」の整理を

「子どもを守る最後のとりで」とも言われる児童相談所の設置について伺います。 

子どもの最善の利益を守るためには、いかに早い段階で、それぞれの困りごとに寄り添った支援を具体的に行っていくかが重要です。 

例えば、 

子どものニーズに合わせて、施設で育つのか、里親等の家庭で育つのか選べること。また、親との関係に苦しむ子どもが、親から一時的に離れるために、一時保護所以外にも親との距離を置ける選択肢を持てる状況も重要になります。が、子どもが選択肢を持つことはままならないのが現状です。 

親や子どもと向き合う児童福祉司は、異動で児童相談所にやってきた地方公務員です。児相の現場では、増え続ける虐待等に対応しなければならない中、一人で抱える案件も多く、目の前の子どもや家族にきめ細かく寄り添っていく時間もないまま日々に追われ、常に疲弊感を持つ職員も多いと聴きます。多くの人が「一日も早く異動したい」と言われているとも聴きます。 

さらには、職員の専門性として、子どもの最善の利益のための倫理観や国際的な視野を持ち、プロとしての知識や技術を高めていく重要性も指摘されています。が、専門的な訓練はほとんど受けずに児童福祉司となり、先に異動してきた同僚から教えられるものの、自己研鑽に励む時間も取りづらい中、あっという間に次の職員を指導しなければならない立場になる現実があるとも聴きます。 

区長は、子どもの最善の利益を守るという理想と現状のギャップをどのように分析し、埋めていくのか、伺います。 

次に、 

児童相談所運営計画案には、基本方針や相談体制等々のことが書かれていますが、「文京区における課題」がまったく書かれていません。
例えば、相談内容や年齢別支援体制の課題や、関係部署間や児童相談所との連携の課題、児童虐待のリスク要因としてあげられる発達に課題のある子どもや保護者への支援の課題など、文京区にも課題は少なくないはずです。 

現状の課題の整理を示し、それらを踏まえた上で運営計画を立てるのが合理的な計画と言えます。 

文京区における課題の明記は必要ないのでしょうか。文京区における課題と共に示してください。

区長答弁

子どもの権利条約では、子どもに関わる全ての活動内容が「子どもの最善の利益」に合致することが要請されているため、区としても、子どもに係る施策については、この考えを基軸に立案しております。 

児童相談所運営計画においても、この考えを基軸に、本区の地域特性や外部の有識者からの意見等を踏まえ、策定することとしております。 

また、児童相談所の運営には、職員一人ひとりが当事者意識を持ち、士気の高い組織運営を実現することこそが最も重要であると認識しております。 

そのため、関係機関との更なる連携強化や、専門人材の確保と育成等といった、区としての課題を踏まえ、運営計画を策定してまいります。 

なお、個別・具体的な課題については、今後も引き続き検討し、必要な計画等を整備してまいります。 

海津の考え

「子どもの最善の利益」を守るための視点から、現状の課題を洗い出し、計画等で明らかにし、各事業ごとに、子どもの最善の利益に合致しているか、現状の課題を改善できるか、職員一人ひとりがまさに「当事者意識」でチェックする体制も重要になります。そうした仕組みの構築も要望していきます。

児童福祉法改正 教育面で中核となる教育センターの役割明確化を

児童福祉法の改正で、児童発達支援センターが、地域における障害児支援の中核的役割を担うことが明確化されました。 
子ども家庭センターを設置する努力義務が課せられ、子どもを「まんなか」に据えて一体的に支援する体制を整備するためには、個々に応じた学びの保障という教育の視点がいっそう、重要になっています。そうした教育面の中心的な役割を担うのが教育センターです。 

しかし、児童相談所を支える二次予防体制に、子ども家庭支援センター、保健サービスセンターはあるものの、教育センターの役割は、不明瞭です。総合戦略の児相設置の支援強化の中にも教育センターの役割は明記されていません。 

縦割りの壁を克服し、一体的に子どもの最善の利益に取組むためにも、明確にする必要があると思います。伺います。

区長答弁

児童相談所とともに、子どもを守る体制の構築のために、子どもに関する相談機関の一つである教育センターの役割は重要であると認識しており、新たな児童相談体制の関係機関として、運営計画に明記してまいります。 

また、外部有識者による検討会議においても、児童福祉部門と教育部門の更なる連携の重要性が提起されたところです。 

今後、児童相談所が対応する案件に応じ、教育センターとの適切な役割分担の下で、必要な連携体制を構築してまいります。

海津の考え

教育センターは本当に重要な組織で、文京区の教育の中心的な役割を担う場所です。 

子どもたちのいじめや不登校、虐待、障害等に関する相談、支援体制をとっていると共に、 

教員研修も含め、臨床心理士やスクールソーシャルワーカー、言語聴覚士等々の専門家が、「チーム学校」の一員として教員を支援する中心的役割を担う場所です。 

ところが、教育センターの現状は、学校等々とつながっているとは言い難いものです。 

児相開設にあたり、教育センターの役割が明記されることで、本来求められるつながりが仕組化され、子ども、家族、個々に応じた相談、支援の提供を速やかにできる体制を構築していくためにも、人員体制も改めて見直すことなど注視していきます。

不登校の子どもに学校外でも学べる機会と個別最適な学びの保障を

教育センターは、乳幼児、児童、生徒に関するいじめ、不登校、家庭内暴力、児童虐待、障害等の教育・生活に関する悩みや問題の予防、発見、解消等にむけて、子どもと保護者、及び学校・園への支援をより効果的に行う使命をもった機関です。 

さらに、不登校の子どもが通う「ふれあい教室」は、居場所となり、適切な学びを学校に通わなくてもできる可能性を大いに秘めた場所です。 

しかし、現状は数々の課題を抱えています。 

先日、文教委員会で視察した広島県の不登校対策では、「学校らしく見えない教室を目指しましょう」と環境整備のポイントの一番目にあげていました。しかし、文京区の「ふれあい教室」は真逆の環境です。「ふれあい教室」は、あえて学校を意識させる造りです。見学に行った子どもからは「学校みたいで行きたいと思えなかった」との声を聴きます。 

ふれあい教室のせっかくのスペースも、夏休みなどはほとんど閉じてしまい、夏休みだからこその、子どもたちの居場所、学びのスペースをまったく提供できていません。 

また、ふれあい教室に通う子どもは、原則、自らが教材を持参しなければなりません。 

本来、子どもにとって居場所であると同時に、学びを保障する場です。さらには、フリースクールなどのように金銭がかからなくても学べる場です。退職校長など、学校で教えてきた人たちが非常勤職員として配置され、心理職等もいますし、学校と連携もとれるのに、その子にあった最適な学びを、ふれあい教室として提供できないのは、専門性の放棄です 

子どもに教材を持参させるなど、各家庭の状況によって格差が生まれかねず大きな問題です。 

学校に行けないことで勉強する機会を失った不登校の子どもに対して、安心できる居場所で それぞれにあった学びを提供することを目的とした教育機会確保法と、「ふれあい教室」の現状には大きなギャップがあります。現状をどのように分析し、今後を改善しようと考えていますか。伺います。

教育長答弁

教室の造りについては、ふれあい教室全体のレイアウトなどを工夫することで、児童・生徒がより過ごしやすい環境となるよう努めてまいります。 

また、教材については、児童・生徒一人一人の興味・関心や、学習効果を高める上で、より本人に適した教材が異なることから、原則として、持参をお願いしております。 

なお、学習教材を持参しなかった場合であっても、ふれあい教室に準備してある教材を活用することで、指導員等が学習を支援する体制ができております。 

ふれあい教室を利用する児童・生徒の要因は多様化しているため、個に応じた、より幅広いプログラムを用意し、多角的に支援することが必要と考えております。 

児童・生徒のニーズや学校の意向を的確に把握し、職員の育成を一層図るなかで、他自治体の動向なども参考としながら、ふれあい教室の充実した運営に努めてまいります。

海津の考え

学校に行くことが目標ではありません。学校に行きたい子どもが、安心して学びを楽しめるような学校にすることは大事です。しかし、同時に、学校以外でも子どもが安心して過ごせ、願うように学べる選択肢があることも重要です。そのためにも、無料で通える「ふれあい教室」の環境整備は不可欠です。子どもの視点に立ち、子どもが居場所としても、学ぶ場としても安心して利用できるようにアップデートしていくことが大事です。 

また、現在のふれあい教室は、開設時間が8時45分からであったり、利用できるのも小3からであったりと、保護者の就労や小学2年生までが過ごす場所としても検討する必要があります。

都英語スピーキングテスト導入で問われる大人の情報提供の姿勢

これからの社会を生きていくためには、「情報」を的確に活用していくことが重要であり、小中学校でも学びがスタートしています。 

大人が、子どもに伝える情報提供の姿勢も問われています。当然、理想は、子どもに関わる情報は「丁寧にわかりやすく、伝わるように」伝えることです。正しく伝われば、子どもが自分に関わることについて意見を表明することもできます。 

大人が、「決まったことだからあきらめる」という姿勢を見せるのではなく、「問題を感じたらあきらめずに意見を伝え続ける」手本となり、意識を育てるのも教育の役目だと思っています。 

文京区教育委員会として、都の英語スピーキングテスト導入にまつわり数々指摘されている問題について、都教委に「生徒とか保護者の不安につながらないように、できるだけ早く正確に丁寧な情報を伝えてください」という主旨を伝えたと聞きます。これ以外に何か意見を伝えていないのでしょうか。 

「適切な時期に丁寧な対応をする」という都教委の回答と、子どもたち、保護者が抱える疑問、不安には大きなギャップがあります。子どもたちの一番身近な自治体教育委員会として、なぜギャップが生まれていると分析しているのか、また、そのギャップをどのように埋めようとしているのか。伺います。

教育長答弁

都教育委員会には、生徒及び保護者に不安が生じないよう、できるだけ早く情報提供を行うことを依頼するともに、当事者に寄り添った丁寧な「対応」を行っていただきたい旨、お伝えしました。また、東京都全体の問題なので、他地区の全ての教育長に丁寧に説明をしていただきたい旨、お話させていただきました。 

スピーキングテストの意義は大きいものの、入学選抜に活用される新たな取組であることから、疑問や不安が生じているものと捉えております。都教育委員会では、スピーキングテストの円滑な実施に向け、プレテストを実施し、準備を進めてきましたが、本番の実施を控え、更なる丁寧な説明が大切と考えております。 

各学校では、既に都からの資料を基に説明を行っておりますが、不安の声等があった場合には、都教育委員会に問い合わせを行い、回答をお伝えすることで、その解消に努めてまいります。

海津の考え

後日、文教委員会でさらに質疑をした折に、スピーキングテストを受けた際の音声データーが公開されることや、特別な支援を要する生徒は、一か所に集められて試験を受けなければならないことを、指導課長に知っているか聞いた際、指導課長は「知らない」との答弁でした。 

教育長は、都に対して「丁寧に説明をしていいただきたい」と要望を出していますが、要は、教育委員会すら「知らない」ことが、後付けでどんどん足されていく状況です。
「知らない」のに、子どもたちに丁寧な説明ができるはずがありません。つまりは、子どもたちの不安が解消されることが可能な状況では到底あり得ないのです。
子どもたちすべてに正しい情報が届けられないまま、スピーキングテストを都立高の入試に導入するということは、不利益を被る子どもを切り捨てることに等しいと考えます。延期、もしくは中止をすべきです。

理念の実現には、全職員の「誰ひとり取り残さない」精神が不可欠

文京区の理念について伺います。 

文京区は、SDGsの17の目標の理念や視点を重視し、様々な計画を立てています。 

ちなみに、SDGsでは、17の目標が設定され、「誰一人取り残さない」が大原則であり、全体を貫く目標です。区長自身、将来にわたり持続可能で豊かな地域社会を構築していくと表明しており、当然、文京区の事業展開を図る上での重要な考え方として、「誰ひとり取り残さない」という信念を持っていると信じています。 

最上位計画と位置付けられる「総合戦略」の中では、SDGsの視点を当てはめ、考え方を踏まえるとしながらも、「誰ひとり取り残さない」という一文は記載されていません。それでも、「だれもがいきいきと暮らせるまち」という記載は「誰ひとり取り残さない」と同義であるとされていることが極めて重要だと感じています。 

つまり区長は、「日の当たらないところにも光を当て」、「誰ひとり取り残さない」という気概のもとに区政運営を行い、「だれもがいきいきと暮らせるまち」を目指しているのだと理解します。おおいに共感するところです。 

しかしながら、全職員がそうした共通意識を持ち合わせているとは、残念ながら思えません。 

例えば公共施設の改築においては、「だれもがいきいき」という区の根本理念を具現化し、建物に入ったときにはだれもが実感出来ることが重要です。が、区立小学校の新校舎建築では、子どもの「最善の利益」「遊ぶ権利」にも関わる、学校内の子どもの動線について、障害のある子は遠回りを強いられ、校庭に出るまでに時間を要する位置にエレベーターを設置するなど、障害の有無で学校生活に格差を生じさせる環境整備になってしまっています。
「だれもがいきいきと暮らせるまち」にしろ、「誰ひとり取り残さない」にしろ、担当職員が事業を遂行するにあたって、区の根本理念として念頭に置いてなかったことが明白です。 

結果として区民に伝わるのは、設計自由度が高い新築においても、「障害のある子は多少の不利益があっても仕方がない、車いす等を利用する障害のある子がいきいきと学校生活を送ることは難しい」という突き付けられる差別の現実です。「だれもがいきいきと暮らせるまち」という理想とは真逆の、「少数者が暮らしやすくするために、そうそう税金を使うつもりはない」と突きつけているようなものです。 

理想として掲げる、「だれもがいきいきと暮らせるまち」という理念には、「だからこそ、誰ひとり取り残さない」という信念が込められているはずです。 

車椅子を利用する子どもなど、少数の子どもが不利益を被るような学校建築がまかり通っている現状のギャップはなぜ生じるのでしょうか。名実ともに「だれもがいきいきと暮らせるまち」とするために、職員の意識改革が進んでいるとは言い難い状況。どのようにギャップを解消していくのか。伺います。

区長答弁

本区においては、「文の京」総合戦略に定める各施策を推進するための基本となる考え方に、SDGsの視点を当てはめることで、その推進に努めているところです。 

学校の改築にあたっては、国の法令並びに、都及び区の条例、指導要綱等関係法規を踏まえた設計を行っており、改築に伴うエレベーターの配置等については、バリアフリーの観点から、教室や廊下等の配置とあわせて、施設全体の使いやすさを踏まえた設計を行っていると認識しております。 

今後も学校施設を含め、個々の施設の状況に応じ、ユニバーサルデザイン等に配慮した施設整備に努めてまいります。 

また、区職員に対して、SDGsの本質的な理解促進に向けた研修を実施しており、全ての職員がSDGsを理解し、区の様々な施策にその理念が反映されるよう、今後とも様々な機会を捉え、意識啓発に努めてまいります。

海津の考え

「施設全体の使いやすさを踏まえた設計を行っている」ということは、使いやすさに、エレベーターを必要とする子ども使いやすさは、考慮しなかった といっているに等しいことです。 

ちなみに、文部科学省の「学校施設バリアフリー化推進指針」には、利用しやすいエレベーターとして、以下のことが記されています。 

  • エレベーターは、障害のある児童生徒等が利用しやすいように、主要な経路に隣接して設置し、案内表示を適切に設置することが重要である。 
  • 障害のある児童生徒等が、休憩時間内の教室移動の際などに円滑に移動できるよう、 要所にエレベーターを設置することが望ましい。 

当然です。ユニバーサルデザインでも、障害の有無によって動線を分けないことが求められています。遠回りを強いられることがあれば、校庭に遊びにいくのも教室に戻るのも時間がかかり、通常の子どもよりも遊ぶ時間が少なくなります。 

▼ 学校施設バリアフリー化令和2年12月推進指針 

報告書「学校施設におけるバリアフリー化の加速に向けて~誰もが安心して学び、育つことができる教育環境の構築を目指して~」 (mext.go.jp) 

https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_sisetuki-000011936_04.pdf

50年以上は使う学校施設。今後の学校施設にユニバーサルデザインも考慮するなら、当然、今、進める改築においても、ユニバーサルデザインを考慮した学校にすべきです。東京オリンピック・パラリンピックのレガシーを残すとしている区でもあるので、障害の有無で動線をわけない公共施設・学校をつくるのは責務です。

ゼロカーボンシティ宣言した区は自ら先頭に立つ姿勢で実践を

国は、8年後の2030年には、2013年に比較してCO2排出量を46%減らすとしています。 

目標達成のためには、区自らが先頭にたつ姿勢で自ら実践してみせることが理想です。  

現状は、そうした姿勢は見えてきません。
区内事業者等にゼロカーボンシティの実現協力を呼びかけたりはしますが、断熱性能を備えた公共施設に向けて改修を行うといった、先頭に立つ姿勢も実践例もありません。 

他自治体では、持続可能な公共施設の実現に向けて、建物の低炭素化に大きく寄与する「断熱」の必要性を広く普及させるために、小学校において実際に断熱工事を施工し、どのくらい光熱費が縮減できるかの実証実験を行っています。 

また、民間集合住宅の高断熱化を推進するため、市営住宅をモデルとして、改修前後のデータを収集し、公表もしています。 

都は都立学校のZEB化を決定しました。葛飾区は地球温暖化対策実行計画を策定し、「今後建て替え等を行う公共施設については、ZEB Ready 以上の認証を目指しZEBの標準化を進める」としています。いっぽう文京区の現状は、公共施設をZEB化を明言していません。 

改築に至らなくても公共施設の断熱化、特に、学校の断熱改修を早急に進める必要があります。文京区の公共施設における区立幼稚園・小中学校の占める割合・床面積は55.8%もあるからです。 

葛飾区は、改修についても、ZEB化を目指して施設の省エネ性能を高めるべく検討するとしています。文京区では地球温暖化の問題解決がさらに問われるようになった、この数年でも学校の断熱改修すら行っていないのが現状です。CO2削減にむけて断熱は効果が高いことを子ども達が学ぶ機会にもなり、もったいないことです。 

文京区として、ゼロカーボンシティ宣言を自ら実践していくためにも、改築をしていない学校を含む公共施設の省エネ率は大きな課題です。ゼロカーボンシティとして、脱炭素に向け、現状の公共施設の課題をどのように分析し、今後どのような手立てをとっていくのか。伺います。

区長答弁

公共施設の改築・改修等においては、更なる省エネルギー化に取り組んでいく必要があると認識しております。 

これまでも、学校の改築や各施設の改修の際には、太陽光発電の導入、エネルギー効率の良い照明や空調設備への更新等を行っております。引き続き、ゼロカーボンシティの実現に向けて、公共施設の省エネルギー化に取り組んでまいります。

海津の考え

文京区は、ゼロカーボンシティを宣言しながらも、公共施設をZEB化することを宣言できません。 区が率先してやっていくのが重要なことは言うまでもありません。が、区民から見える区の姿は、「掛け声だけ」。 

例えば区内の民間企業はどうかというと・・・
誠之小や柳町小、明化小の改築と同時期に設計、工事を進めて完成した共同印刷の新社屋はZEB Ready※ を達成できています。 

文京区は、「学校は開放部分が多いから難しい」、「学校から夏休み中に改修を終えるように希望が出るから、断熱改修などは難しい」など、できない理由をあげつらね、やりません。
それらの課題をどう解決するか、知恵を絞り、結果を出すのが本来の公務員の仕事です。 

他自治体は、学校等でもZEB化を目標としているのに比べて、文京区は難しいというのは、そもそもが課題を前にして思考停止に陥っている状態に等しいと言えます。 

ちなみに、同じ会派の沢田議員が建設委員会で、ZEB化を目指すことを明言しない理由を質すと、「脱炭素が目的であって、ZEB化することが目的ではない」「共同印刷は大企業だからZEBReadyを実行することができたが中小企業では難しいので、文京区としてはそうしたことも考慮してZEB化を明言しない」と、意味がわかりません。 

文京区は、環境整備としては高断熱化等を取組む方針で、結果としては、当然、ZEB化を目指すものになります。なぜ、言えないのかが理解できません。 

また、子ども達にとっても、学校施設のZEB化は脱炭素社会に向けた教育課題でもあります。 

ゼロカーボンシティ宣言をして2050年には炭素ゼロを目指し、断熱改修を区民の住宅や企業に求めながらも、文京区の姿勢は後ろ向きと言わざるを得ません。 

ZEB Readyとは : 負荷抑制と自然エネルギー利用、設備システムの高効率化で年間エネルギー消費量50%以上削減をめざす建築物 

ZEBについて詳しくはこちら↓をご参照ください 

▼環境省「ZEB PORTAL – ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ゼブ)ポータル」 (env.go.jp) 

https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/index.html

災害時の避難所の質の向上に向けて学校の断熱改修を

災害対策基本法で「避難所における良好な生活環境の確保等に努めること」が求められています。文京区としても、避難所を開設するだけにとどまらず、「避難所の質の向上」に取り組むことは、被災者の健康を守り、その後の生活再建への活力を支える基礎となると理解され、目指しています。 

一方、避難所となる文京区立小中学校の体育館の屋根や床は、十分な断熱が施されていないことが多々あります。それだけに、非常用電源では、暖房、冷房が十分に利用できない状況も想定されます。通常の電源に戻ったとしても、断熱改修が不十分なことから冷暖房が十分に機能せず、避難者の健康を守るとは言い難い状況です。 

建物の断熱性能の向上は、脱炭素に向けたもっとも基本的な対策として有効です。長期間の避難生活において、特に高齢者や幼児などの健康への悪影響を回避できる可能性があります。 

避難所の質の向上という理想に対して、断熱性能が不十分なままという現状にギャップが生じているのは明らかです。このように、被災者の健康を守るための改修が進まないのは、どのようなことが原因と分析していますか。どのようにギャップを解消するのか。伺います。

教育長答弁

学校を改築するに当たっては、体育館の屋根や床を含め、断熱性能を考慮した計画としております。 

また、既存の体育館の改修時には、空調機を設置するほか、屋根については遮熱効果の高い塗装工事を行っております。 

体育館全体の断熱工事は、大規模な改修が必要となることから、改築等の際に、関係部署と協議を行い進めてまいります。

海津の考え

「誰もが適切な住居に住むことができる権利」は、国際条約で基本的人権として認められています。憲法25条でも「住まいは人権」としています。 

健康を害しうる要素から守られること、高齢者や障害者等にも利用できること、誰もが安全で健康な生活を保障する避難所の整備をしてこそ、被災者の方の適切な住居になります。
文京区の避難所となる区立学校の体育館の多くは、十分な断熱性能を備えておらず、安全で健康な生活を担保できません。網戸もついていないので、蚊等が入ることを考えると換気すら十分に行えないのが現状です。 

予算に関わらず、避難所の質の向上を積極的に進めることこそ、文京区が災害時にも、「住まいは人権」として「適切な住まいに住む権利」を守るための具体的な行動です。 

体育館の改築は、今後、予定されているのは、小日向台町小、千駄木小のみです。 

被災し、住まうところを失い、先々の見通しが持てないときこそ、なお一層、「住まいは人権」であることを、どのようなときにも区が尊重し、区民に保障することが重要です。 

改修を進めなければ、被災者の住まいである避難所の質を担保できず、そこでの生活に負担を強いることは明らかです。
被災しても「住まいは人権」としての避難所の質の向上は、災害対策として欠かすことができません。

小石川図書館・竹早公園は「誰ひとり取り残さない」一体的整備を

竹早公園・小石川図書館の整備について調査が進められ、9月下旬には報告書がまとめられます。公園、テニスコート、図書館、いずれも区民の暮らしを豊かにする重要な資源です。 

公園は、地球温暖化で頻繁になっている自然災害を未然に防ぐためにも重要です。樹木は周囲の熱を奪い、幹は太陽の光を遮断する等、暑さを緩和するためにも大きな力を発揮します。ゼロカーボンシティ宣言をしている区としても、緑を減らすようなことがあってはならず大切な視点です。 

また国は、心身の健康のためにもこれまで以上に運動を推奨しており、テニスコートの数を減らすようなことは国の方針に逆行するものです。 

一方、小石川図書館の建替えでは、高齢者の方々、不登校の子ども、家にひきこもりがちな人にとっても、また、経済的に困窮されている方々にとっても、お金のかからない居場所として、より過ごしやすい、誰ひとり取り残さない空間である機能が求められています。 

小石川図書館の改築に向けた報告書に書かれた内容をどこまで具現化できるのでしょうか。車椅子利用者も想定して、本棚と本棚の間を車いすが人ともすれちがえるような幅をいずこもしっかりと確保する、障害の有無で動線を分けない設計にする覚悟はあるでしょうか。 

仮に、報告書で求められた機能が入りきらないケースでは、他の場所で担保していくのでしょうか。 

区民の豊かな暮らしをSDGsの視点で考えたときに、「誰ひとり取り残さない」一体的整備と、現状のスペースの課題をどのように分析し、ギャップを埋めていくのか。伺います。

区長答弁

現在、一体的整備に関する基本計画の策定に向けて、課題や有効性の分析等を行うための基礎調査を実施しているところです。 

今後、本調査の結果や国の方針等を踏まえ、図書館の機能向上に加え、公園やテニスコート等、各施設の特徴を生かした調和のとれた空間を創出し、区民の豊かな暮らしに資するものになるよう、各施設の利用者だけでなく、町会等、近隣住民の意見も丁寧に伺いながら、地域に愛される施設となるよう、検討を進めてまいります。

海津の考え

町会等や近隣住民の意見を丁寧に聴くことも大事です。が、地域の公園、テニスコート、図書館としての機能だけでなく、同時に、区として認識している高齢化等の地域課題を明らかにし、解決につながる側面も合わせ持つなど、区民の誰もの生活の質の向上に寄与するような整備を、区が提案していくことも区の責務です。 

教育長答弁

「文京区立図書館改修等に伴う機能向上検討委員会」の報告書では、現在の小石川図書館について、蔵書のあり方や必要な設備等に関する課題が示されております。中でもバリアフリーの対応については、大きな課題の一つであると認識しております。 

小石川図書館の改築に当たっては、区内トップレベルの貸出数に見合った蔵書を維持するとともに、障害の有無に関わらず、だれもが利用しやすい施設環境とすることが重要と考えております。 

今後、一体的整備に関する基本計画の策定に当たっては、報告書で示された課題の解決に向け、限られたスペースの中で優先順位をつけながら、提供するサービスのあり方や蔵書目標などを検討してまいります。また、一体的整備に伴うスペースの有効活用により、障害の有無にかかわらず、多様な人々が交流し、賑わいのあるコミュニティの場となるよう意を用いてまいります。

海津の考え

文京区の中央図書館は真砂図書館ですが、小石川図書館は実質的には中央図書館的な役割を担い、区内トップの利用実績です。それだけに、改築にあたってはよりユニバーサルな視点で、蔵書の拡充や、勉強するなどゆっくりと過ごせる環境整備など、様々な地域課題を解決できる図書館をめざしてもらいたいものです。 

仮に、現状の建替えでそうした課題を整理できないのであれば、民間の場なども活用することを検討することも、地域課題を解決するためには不可欠だと思います。 

荒川区の区立図書館「ゆいの森あらかわ」は、多くの区民から愛され、平日約1500人、休日約2000人の来館者があるそうです。 

▼「ゆいの森あらかわ」 

https://www.yuinomori.city.arakawa.tokyo.jp/index.html

生理の貧困の解消は平等と尊厳に欠かせず、やるのが「当たり前」

スコットランドでは、地方自治体や教育機関に対して、生理用品の無償提供を義務付ける法律が施行されました。経済的な理由などから生理用品を入手することが困難な状態にある「生理の貧困」という言葉が日本でも広く聴かれるようになりました。
 文京区では、シビックセンター内や、学校等で整理ナプキンの配備を進めています。 

ですが、学校現場では、配備された生理用ナプキンを利用するたびに保健室に「使った」ことを申告しなければならないといったハードルを設けるなど、人権の問題、プライバシーへの配慮が課題となっています。 

さらには、学校によっては、「ナプキンを忘れてくるようになる」「ナプキンの管理が大変」といった理由をあげて、個室トイレに常備することを躊躇する学校すらあります。このような学校間格差は、人権の問題が大きく関わる以上、各学校の学校経営に委ねる次元の問題ではないと考えます。 

生理は恥ずかしいことではありません。『置かれているのが当たり前』なトイレットペーパー同様に、生理用品が常備されている社会。誰もがためらいなくトイレットペーパーを使うように、誰もが必要な時にためらいなく生理用品を使える環境を実現することが理想です。 

生理の貧困の解消につながるだけでなく、だれもが生理に関して知識を得る性教育にもつながっていくものです。 

理想と現状のギャップがなぜ生まれるのか。今後、どのように改善していくか伺います。 

区長答弁

誰もが生理用品をためらいなく使える環境を整えることは大切であると考えます。 

不特定多数の方が利用する公共施設における生理用品の配備には、衛生管理や持ち去りの対策等の課題が挙げられますが、生理用品を必要とする人に確実に届けられるよう、他の取り組み事例なども参考に検討してまいります。

海津の考え

他の取組事例を参考にするのも重要ですが、他の自治体から参考にしてもらえるように、生理用品を必要とする人に確実に届けられる取組みを生み出していくことが不可欠です。

教育長答弁

現在、一部の学校では、トイレに生理用品を配備しております。また、それ以外の学校においても、養護教諭等が、児童・生徒にとって相談しやすい環境作りや、気兼ねなく使用できる工夫を行い、保健室で生理用品を渡しております。 

保健室での対応については、養護教諭が生理用品を手渡すことによって、直接話を聞き、現状を把握できるメリットがある一方、児童・生徒にとってハードルが高い面もあることから、今後は、全小中学校のトイレに生理用品を配備することも検討してまいります。

海津の考え

全小中学校でトイレットペーパーのように当たり前に配備されていけば、子どもたちの人権についての意識が高まることにもつながります。

遅々として進まない文京区のジェンダーギャップ解消の本気度は?

「文京区の目指す『男女平等参画社会』とは、一人一人が互いに人権を尊重し、喜びも責任も分かち合いつつ、性別に関わりなく、その個性と能力を十分に発揮して、いきいきと暮らせる社会です。」 と、男女平等参画推進計画には美しい理想が掲げられています。 

具体的には、各種の委員会・審議会等の委員選出にあたり、男女いずれかの性が全委員数の40%未満とならないようにすることを理想としています。 

しかし現状は、文京区の審議会等で、男女いずれか一方の性が委員総数の4割未満とならないという目標に達している割合は、令和2年度末でわずか16.2%です。 

関係団体等に委員の選出を要請する際に、女性委員が推薦されないことなどが一因にあることは承知しているところです。ですが、区自らが選出する学識経験者の委員は、区が「意思をもって」女性を登用することができます。にもかかわらず、実態は女性有識者をゼロとしている審議会等すらあります。大きな問題です。 

令和2年度末で学識経験者177人のうち女性は約26%、46人にすぎません。審査に必要な専門性を持つ女性の学識者を探す調査には困難が多いことも理解できますが、区は、所管課への周知に努めるとしているものの実効性が上がっていません。 

結果が伴わない周知であり、各所管課がジェンダーギャップの解消を本気で目指しているとはとても感じられません。男女平等参画推進計画の推進状況評価でも、指標における達成度がむしろ下がっているものも多く、所管課の自己評価も「不十分であった」が目立つのが現状です。 

審議会等の委員改選の際には、目標とする比率を考慮して女性有識者を登用し、ジェンダーギャップ解消への結果を残すことが理想です。それが不十分である文京区の現状をどのように分析し、理想とのギャップをどのように埋めるのか、伺います。

区長答弁

委員会・審議会等における男女平等参画の推進は、男女それぞれの視点に立った区政運営に必要不可欠であり、これまでも、「男女平等参画推進計画」における計画事業として、成果指標を定めるとともに、推進状況評価の重点項目に位置付け、全庁的に取り組んでまいりました。 

こうした取り組みにより、昨年度の委員会・審議会における女性委員の割合は改善したところです。 

一方で、学識経験者の女性委員の割合は、これまでの学識経験者の実績や継続性等を考慮していることもあり、ほぼ横ばいで推移しております。 

男女平等の推進に向け、学識経験者の女性委員の、より積極的な登用等の取り組みが必要と認識しております。 

今後も、これまでの働きかけに加え、女性の学識経験者の登用方法を含めた更なる方策について、男女平等参画推進会議の意見等も踏まえ検討してまいります。

海津の考え

女性学識経験者の登用は、区の裁量で可能であり、意識を持てばできることです。男女平等参画推進会議の意見等を踏まえなくても、女性学識経験者の登用をしている所管があることも事実です。改めて、「意識する」ことさえできていない現状に立ち、改善が望まれます。

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注)掲載した質問文は事前に区に提出した原稿です。本会議では、時間の関係で読み上げていない箇所もあります。

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