「支援しています」。
でも、子どもの苦しさは変わらない。
――子どもの姿から、学校のあり方を考える
「困っていることを何度伝えても、対応が変わらない」
「話し合いで決まったことが、毎日の学校生活に反映されない」
「担任や担当者が替わるたびに、一から説明し直している」
保護者の皆さんには、こんな経験はないでしょうか。
学校から返ってくるのは、「支援しています」「連携しています」という説明。
でも、子どものつらさは変わらない。何をどう見直すのかも示されない。
相談しても変わらない。その積み重ねが、「学校はわが子の困りごとを本当に受け止めているのか」という不信感につながります。
そして、何より大切なのは、その間も子ども自身が困り続けているということです。
学校に行くことだけが目標ではない
子どもには、学校でも、家庭やフリースクールなど学校以外の場所でも、安心して過ごし、学ぶ権利があります。
文部科学省も、不登校への支援について、登校という結果だけを目標にするものではないとしています。
学校に行くかどうかについて、子ども自身の思いや状況が尊重されなければなりません。
一方で、学校には、子どもが「行きたい」「ここにいたい」と思え、安心して学べる場所をつくる責任があります。
学校に行きたいのに、つらくて行けない子どももいます。通っていても、苦しさを抱えている子どももいます。
学校に来ているかどうかだけでなく、子どもが安心して過ごし、必要な学びが保障されているかを確かめることが大切です。
文京区の不登校は445人
文京区の令和6年度の不登校児童・生徒数は、小学生215人、中学生230人、合わせて445人です。
中学校の不登校出現率は9.39%で、全国の6.79%、東京都の公立中学校の7.68%を上回っています。
不登校の背景は一人ひとり異なり、この数字だけで学校の支援不足が原因とは言えません。
だからといって、学校の対応を見直さなくてよいということではありません。
その必要性を考えるうえで、重要な指摘が文科省の調査研究報告書にあります。
報告書は、通常学級に在籍し、通級による指導を受けていない子どものうち、発達障害に関する支援の求めや相談があった子について、必要な指導や支援が十分に行われていなかった可能性を指摘しています。
困りごとが学校に伝わっていても、必要な支援が十分に届いていなかった可能性がある。
見過ごせない指摘です。
報告書は、個別の対応に加え、通常学級にも支援を必要とする子がいることを前提に、授業や環境を工夫する重要性を示しています。
この調査だけで、不登校の原因や支援の効果を断定することはできません。
しかし、子どもの困難を本人だけの問題にせず、学校の教え方や環境にも目を向ける必要性を示す報告です。
「みんなと同じ」では、学びが保障されないこともある
学校に合理的配慮を求めても、「お子さんだけ特別なことはできません」と言われることがあります。
しかし、障害による困難を減らし、ほかの子と同じように学びに参加できるようにする合理的配慮の提供は、学校に求められる法的義務です。
例えば、読むことが難しい子に読み上げを認める。書くことに困難がある子に端末での回答を認める。
必要な配慮は一人ひとり異なります。
本人や保護者と話し合い、具体的な方法を考える。求められた方法での対応が難しい場合も、その理由を説明し、代わりの方法を一緒に考える必要があります。
全員に同じ方法を求め、そのために学びに参加できない子がいる。それは公平とは言えません。
一人ひとりに必要な配慮を行い、学びへの参加を保障することは、学校の義務です。


【文科省の報告書より】
必要な指導や支援が十分に行われていなかった可能性を指摘。子どもへの個別対応に加え、通常学級の授業や環境を工夫し、学校全体で支える重要性を示しています。
出典:文部科学省「特別支援教育・不登校担当の校内連携体制の在り方に関する調査研究」報告書3・9ページ
※表の数値は、調査に回答した学校の集計です。「通常学級の中学生の46.08%」は、通級を受けず、発達障害に関する支援の求めや相談があった生徒に限った割合です。
子どもの行動だけでなく、その背景を見る
子どもが落ち着かない。課題に取り組めない。教室に入れない。
そんなとき、行動だけを見て注意したり、もっと頑張るよう求めたりする前に、その背景を理解する必要があります。
何に困っているのか。どんな場面で負担を感じているのか。何があれば安心できるのか。
子ども自身の声を聴き、言葉にならない思いも、表情や行動、家庭での様子などから丁寧に捉える。
そのうえで、教え方や課題の量、教室の環境、関わり方を考え直す。
子どもを学校のやり方に合わせるのではなく、子どもの姿から、教え方や環境を考える。それが教員に求められる専門性です。
ただし、教員一人で抱え込むものではありません。
本人や保護者とともに、必要に応じて作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)、心理職なども加わり、それぞれの専門性から子どもの困りごとを捉え、具体的な手立てを考えることが大切です。
会議や計画があるだけでは、支援は届かない
話し合ったことを、実際の支援につなげる必要があります。
何のために、誰が、どの場面で、どのように支援するのか。
個別の教育支援計画や個別の指導計画に具体的に明記し、教員や専門職など、関わる人たちが共通理解を持つことが不可欠です。
文科省の報告書に掲載された校長向け確認事項でも、支援計画を作成して終わりにせず、実施・評価・改善を繰り返すことが重視されています。保護者から聞いた家庭での様子を計画に反映することも求めています。


会議を開き、計画を作った。それだけでは、支援、連携できているとは言えません。
決めた支援を毎日の授業や学校生活で実行し、本人の困りごとや負担が軽くなっているか、安心して過ごし、学べているかを、本人の声や様子から確かめる。
改善が見られなければ、方法を見直す。担当者が替わっても、支援が途切れないよう確実に引き継ぐ。
保護者との連携も、学校の方針を説明し、理解を求めるだけでは成り立ちません。本人や保護者が伝えた困りごとを受け止め、実際の支援に反映する必要があります。
こうした取組を担任一人の頑張りに頼らず、学校全体で行えるようにすることが、管理職の責任です。
教育委員会も「学校で対応しています」で終わらせない
学校に相談しても改善されず、教育委員会を頼ったのに、「学校で対応しています」と言われる。
それでは、親子はどこに相談すればよいのでしょうか。
教育委員会には、学校で何が行われ、子どもの困りごとや負担が軽くなっているか、なぜ困難が続いているのかを確認し、改善につなげる役割があります。
また、教員が専門職に相談できる機会を確保し、必要な研修や人員配置を行うことも重要です。
文科省の事例集には、作業療法士(OT)などが学校で教員と一緒に支援を考える取組も紹介されています。
文京区でも、不登校の子や特別支援学級に通う子の保護者から、OTの常駐を求める声が寄せられています。
専門職が子どもの様子を実際に見て、教員と一緒に手立てを考え、その助言が毎日の授業や学校生活に生かされる。そうした継続的な取組が必要です。
なお、今回の調査では、知的障害のある子は集計対象外です。こうした子どもたちにも必要な支援が届いているか、別に把握する必要があります。
変わることを、子どもだけに求めない
学校に行くかどうかは、子ども自身の思いや状況が尊重されるべきことです。
その一方で、学校には、子どもが安心して学べる場所であるよう、教育のあり方を見直し続ける責任があります。
子どもの困難を本人の努力不足として片づけず、その背景を理解し、必要な手立てを実践する。
「支援しています」という説明で終わらせず、子ども自身が「わかってもらえた」「安心していられる」と感じられる学校にすることが必要です。
学校に行くかどうかを子どもに問い続けるのではなく、学校は子どもにとって安心できる場所になっているかを、私たち大人が問い続けたいと思います。
参考資料
東京都教育委員会「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
文部科学省「特別支援教育・不登校担当の校内連携体制の在り方に関する調査研究」報告書・事例集


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