元町ウェルネスパークの監査結果を受けて
違法な財産管理を「結果的に損害はなかった」で終わらせてはならない
元町ウェルネスパーク西館の土地貸付をめぐり、私たち「区民が主役の会」の3人が行った住民監査請求について、監査結果が示されました。
今回の監査で最も重大なのは、文京区が、区有財産について適法な権利を設定しないまま順天堂大学に使用させていたことが、「民法上の不法占有状態にあるとともに、法に違反する状態」と認定されたことです。
これは、単なる事務上のミスではありません。
公有財産は区民の財産です。だからこそ、「誰に、何の権利に基づいて、どのような条件で使わせるのか」を、法令に従って決めなければなりません。
ところが今回、文京区はその最も基本的な法的整理を行わないまま、区有財産を第三者に使用させていました。
これは、「結果として区に金銭的な損害があったか、なかったか」以前の問題です。
そして監査結果を読み直すと、違法状態が認定された一方で、なぜそのような財産管理が行われたのか、誰がどのように判断したのか、適正な対価を受け取っていたと本当に言えるのかなど、重要な点が十分に解明・検証されないまま残されています。
私たちは、ここを曖昧にしたまま、この問題を終わらせることはできないと考えます。
1 「何の権利で使わせるのか」を決めないまま、区有財産を使用させていた
文京区は、順天堂大学に貸し付けていた土地のうち、認定こども園の園庭部分883.57㎡を貸付対象から外し、区が直接管理する「行政財産」としました。
ところが、その園庭の地下には、順天堂大学が所有・使用する地下体育館があります。
監査結果は、2025年3月の契約変更によって園庭が貸付対象から外された結果、順天堂大学が地下体育館を占有す法的根拠を失い、「不法占有の状態」となったと認定しています。
さらに、園庭が普通財産から行政財産に変更されたにもかかわらず、地下体育館について適法に私権を設定した実は認められず、地方自治法第238条の4に違反する状態にあるとしています。
つまり、今回明らかになったのは、単に「契約書の書き方に不備があった」という問題ではありません。
行政財産となった区民の土地を、何の法的権利に基づいて民間事業者に使用させるのか。その最も基本的な整理をしないまま、使用を継続させていたのです。
本来は、行政財産として例外的に利用させることができるのか、目的外使用許可によるのか、あるいは普通財産に戻して貸し付けるのかを、まず法令に基づいて決めなければなりません。
そのうえで初めて、その利用に対する適正な対価を決めることができます。
「何の権利で使わせるのか」が決まっていないのに、金額だけを先に整理することはできません。
2 違法状態を認定しながら、是正に動いているから「理由がない」でよいのか
監査委員は、地下体育館について「民法上の不法占有状態にあるとともに、法に違反する状態」と認定し、
「区はこれを是正すべきである」と明記しています。
ところがその一方で、区がすでに法務部門に相談するなど是正に向けた取組を進めていることを理由として、この点について「請求人の主張には理由がない」と判断しました。
ここは、今回の監査結果を読むうえで極めて重要な点です。
「違法ではなかったから、請求に理由がない」のではありません。
違法状態は現に認定されています。
指摘を受けた区が是正に動き始めたことと、それまで違法な財産管理を行っていたことは、別の問題です。
今後、適法な権利を設定すれば、それまでの違法状態がなかったことになるわけでもありません。
なぜ違法な状態が生まれたのか。いつから区はそれを認識していたのか。誰が是正の必要性を判断したのか。監査請求がなければ是正に動いていたのか。
こうした経過まで明らかにして初めて、適正な是正と再発防止につながると考えます。
3 「損害はない」という結論の根拠は、十分に検証できる形で示されていない
監査は、地下体育館を使用する経済的価値について、順天堂大学の専有部床面積割合に地下体育館も含まれているため、現在の貸付料にすでに評価・反映されていると判断しました。
さらに監査委員は、園庭以外の土地面積と園庭地下を占有する建物面積を分けて改めて試算し、区の減額前貸付料との差が「1%未満」だったことを理由の一つとして、個別外部監査人の判断を是認しています。
しかし、監査結果には、その「1%未満」という試算について、区民が追試できるだけの具体的な数値や計算過程が示されていません。
これは重要な問題です。
監査人自身も、園庭や地下体育館の面積を含めて貸付料を計算する方法など、他の計算方法が存在することを否定していません。
それにもかかわらず、なぜ現在の算定方法を妥当と判断できるのか。
2園庭883.57㎡を貸付面積から外す一方、その地下を順天堂大学が利用する価値については「床面積割合にすでに含まれている」とする評価は、本当に適正なのか。
「損害はなかった」と結論づけるのであれば、その根拠となる計算を区民が検証できる形で示す必要があります。
4 「賃料」だけを比べればよいのか-行政財産としての対価の検証が必要
もう一つ、明らかにしなければならない問題があります。
園庭は現在「行政財産」です。
監査結果自身が、行政財産となった園庭地下について、順天堂大学が利用するための適法な私権が設定されていなかったと認定しています。
だとすれば、問題は単に「現在受け取っている土地の貸付料の中に地下体育館の価値が含まれているか」だけではありません。
行政財産を民間事業者に使用させるのであれば、地方自治法上どの仕組みによって利用させるのかを決め、その法的根拠に応じた対価を検討する必要があります。
目的外使用許可によるのであれば、条例等に基づく使用料をどう考えるのか。
普通財産に戻して貸し付けるのであれば、どの範囲を、どの条件・価格で貸すのか。
監査結果でも、行政財産の例外的利用、目的外使用許可、普通財産に戻す方法など、複数の選択肢について今後検討する必要があるとされています。
つまり、「何の権利で使わせるのか」という問題自体が、まだ解決していません。
その法的整理をしないまま、「現在の貸付料で経済的価値は回収されているから損害はない」と結論づけるだけで十分なのか、改めて検証が必要です。
5 なぜ違法な財産管理が生じたのか-原因と責任は解明されていない
監査委員は、個別外部監査人が指摘した、
①公有財産管理運用委員会の制度設計上の不備
②公有財産の変更に係る不十分な調査・検討
③各部署・各担当者の法適合性に関する認識不足
について、「首肯せざるを得ず、区においては重く受け止められたい」としています。
さらに、契約管財課によるチェック、法規担当との事前協議、副区長による法適合性やリスクの確認など、ガバナンス強化を求めています。
これは、今回の問題が単なる一担当者の事務ミスではなく、組織としての財産管理・意思決定の問題だった
ことを示しています。
しかし、原因の指摘と、事実経過の解明は同じではありません。
なぜ、複数の部署や公有財産管理運用委員会などの手続を経ながら、適法な権利を設定していないことに誰も気づかなかったのか。
誰が、いつ、どの資料をもとに、園庭を貸付対象から外すことを判断したのか。
その際、園庭地下に順天堂大学の施設が存在することを誰が認識していたのか。
法的な問題について、誰が確認し、どのような判断をしたのか。
違法状態を作り出した具体的な意思決定の経過と責任の所在は、今回の監査によって十分に解明されたとは言えません。
原因を解明しないまま「情報共有を徹底する」「法令への認識を高める」という一般的な改善策を示すだけでは、本当の再発防止にはなりません。
6 監査そのものは、必要な調査を尽くしたのか
個別外部監査の調査過程についても、検証が必要です。
今回問題となった2025年3月の契約変更は、文京区と順天堂大学という二つの当事者によって行われたものです。
しかし、個別外部監査報告書作成時点では、契約相手である順天堂大学から十分な回答を得られず、事業に関与したPwCからも十分な事情聴取ができていません。
その後、順天堂大学から監査委員に回答書が提出されていますが、監査委員は「報告書に特段の影響を与えるものではなかった」としています。
では、順天堂大学は契約変更をどのように認識していたのか。
園庭を貸付対象から外せば、地下体育館の占有権原がなくなることを認識していたのか。
PwCは契約変更や貸付料算定にどこまで関与し、どのような助言をしていたのか。
双方への十分な調査なしに、契約変更に至った事実経過や貸付料の妥当性について、十分な結論を出せたのか。
ここも、「疑問が残る」というだけではなく、監査として必要な事実確認が尽くされたのかを検証する必要があります。
7 貸付料そのものの妥当性の検証も終わっていない
私たちが問題としてきたのは、地下体育館だけではありません。
元町ウェルネスパーク西館の貸付料は、土地を最有効使用した場合の価格から、区側の条件などを理由として複数の減額を行って算定されています。
園庭部分を貸付料の計算から外すことは適正だったのか。
建物の床面積割合による減額、容積率の未消化を理由とする減額、認定こども園の配置を理由とする減額などを重ねることによって、同じ制約を重複して評価していないのか。
そして、約50年という長期にわたって区民の土地を貸し付けるにあたり、そもそもの土地評価や貸付料は適正だったのか。
今回の監査結果は、主として園庭地下の占有権原と、それに伴う遡及徴収の必要性について判断したものです。
これをもって、元町ウェルネスパーク西館の貸付料全体の妥当性まで検証が終わったとすることはできません。
「違法だった。しかし損害はない。是正に動いているから終わり」にはしません
私たちが住民監査請求に踏み切ったのは、議会で繰り返し問題を指摘しても、文京区から十分な説明や検証が行われなかったからです。
そして監査の結果、実際に、文京区が区有財産について適法な権利を設定しないまま第三者に使用させ、「民法上の不法占有状態にあるとともに、法に違反する状態」にしていたことが認定されました。
これは極めて重い事実です。
一方で、今回の監査によってすべてが明らかになったわけではありません。
なぜ違法な財産管理が行われたのか。
誰が、いつ、何を根拠に判断したのか。
誰がその責任を負うのか。
違法状態はいつ、どのような方法で是正されるのか。
「損害はない」とした計算は本当に適正なのか。
行政財産を使用させる対価として、本来徴収すべきものは何なのか。
貸付料・土地評価全体は適正だったのか。
そして、個別外部監査は必要な調査を尽くしたのか。
これらは、なお解明・検証しなければならない問題です。
公有財産は、行政のものではなく、区民の財産です。
違法な財産管理が明らかになった以上、「結果として損害はなかった」「現在は是正に向けて動いている」という説明だけで終わらせることはできません。
「区民が主役の会」は、今回の監査結果を終着点ではなく、事実を明らかにする出発点と捉えます。
違法な財産管理が生じた経緯と責任、適正な是正、貸付料・土地評価の妥当性、そして監査が十分な調査・検証を尽くしたのかについて、引き続き明らかにしていきます。
文京区議会
区民が主役の会



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