約110億円で改築した柳町小学校
――「地域に開かれた学校」は実現したのでしょうか
先日、長い改築工事を終えた文京区立柳町小学校の校舎内覧会に参加しました。
学校は、子どもたちの学びを支える基地です。それだけに、多様な子ども一人ひとり、個別最適な学びを創り出せる環境を整備することが最も重要です。
一方、
新しくなった教室や体育館、音楽室、家庭科室、図書室などを見て回りながら、気になったことがあります。
「この学校、地域の人たちはどこまで使えるのだろう?」
学校教育に使わない夜間や休日などに、地域の人たちも利用できる校舎に仕上がったのでしょうか。
例えば
音楽室、家庭科室、図書室、多目的室。
実際に歩いてみると、こうした部屋を地域開放する際、地域の人たちが無理なく利用できる動線になっているようには、私には見えませんでした。
柳町小学校の改築には、約110億円の公費が投入されています。
長い工事期間中、近隣の皆さんは騒音や振動、粉じんなど、日々の暮らしへの影響を受けながら、学校改築に理解と協力をしてこられました。
だからこそ、これだけの税金を使う公共投資、社会投資として、学校教育を最優先にしながら、地域にとっても価値を生み続ける施設として整備する視点は欠かせないと思います。
地域の人たちの暮らしを豊かに
学校は、何よりも子どもたちの学びと生活の場です。
そのことを大前提にしても、学校の登校日は年間およそ200日。放課後の活動や教職員の仕事もありますが、夜間、休日、長期休業期間には、学校教育に支障なく地域で活用できる時間があります。
約110億円をかけて整備した公共施設です。
音楽室で楽器を楽しむ
家庭科室で料理を楽しむ。
図書室で本を読み、学ぶ。
身近な地域に、趣味を楽しみ、新しいことを学び、人とつながれる場所がある。
それもまた、税金による社会投資が生み出す大切な価値ではないでしょうか。
公共投資の価値は、建物を完成させることだけではありません。
その建物が、その後50年、60年と、子どもたちや地域の暮らしにどう生かされるのか。
そこまで考えて施設をつくる必要があります。
区もそうした学校、公共施設を目指してた
柳町小学校の改築当初の資料や議会答弁を確認すると、これは単に私が「地域開放したらいいのでは」と言っている話でもありません。
文京区自身が、柳町小学校の改築当初から「地域に開かれた学校」を掲げていました。
文京区自身が掲げた「地域に開かれた学校」
柳町小学校の改築整備方針には、
「地域に開かれた施設環境の整備」
という項目があります。
そこには、
「地域コミュニティの核、生涯学習等の基盤として、学校施設を地域住民等が有効に活用することができる施設整備を行う」
と明記されています。
さらに地域開放にあたっては、
「児童の学習に支障のないようにし、動線、運営管理の方法等に十分配慮した施設整備を行う」
としています。
ここで重要なのが「動線」です。
学校には、子どもたちの安全やプライバシーを守るため、地域の人が自由に入るべきではない区域があります。
教室だけでなく、廊下にも子どもたちの名前や作品、学習の様子などが掲示されています。
だからこそ、
地域利用者が教室前の廊下を通らず目的の部屋に行ける。
トイレやエレベーターを利用できる。
そのたびに学校側が複雑な鍵やシャッター操作をしなくても安全を守れる。
そんな動線を、設計段階からつくっておく必要があります。
「制度上、貸し出せる」だけではなく、学校にも地域にも無理なく、実際に使える建物であること。
それが本当の「地域開放」だと思います。
区長は「地域開放できる動線を考慮した設計」
2017年11月の区議会本会議で、体育館だけでなく、図書館や特別教室も地域開放し、そのための動線や運営管理まで考えた学校づくりについて質問しました。
これに対して成澤区長は、柳町小学校などについて、
「体育館等を地域に開放できるよう、児童の学習や学校運営に支障のない動線を考慮した設計が行われている」
と答弁しました。
さらに区は、特別教室や図書室の地域開放について、
「今後の調整課題」
と公式に示していました。
では、完成した今、確認したい。
「体育館等」の「等」とは何だったのでしょうか。
特別教室や図書室の地域開放という「調整課題」は、その後どこで、どのように検討され、どのような結論になったのでしょうか。
そして、その結論は完成した校舎の設計にどう反映されたのでしょうか。残念ながら、私には見えませんでした。
地域開放に課題ある設計
2018年には、さらに具体的な問題を指摘しました。
柳町小学校の当時の設計案では、地域利用者がエレベーターを使うためには学校への申請が必要で、子どもたちの安全や個人情報を守るためには、地域開放のたびに学校側がシャッターを操作する必要がありました。
シャッターで学校区域を区切ること自体は必要です。
問題は、地域開放するたびに学校側が、多数のシャッターを閉めなければならないとなるような大きな手間がかかる設計では、結局「管理が大変だから開放できない」となりかねないことです。
だからこそ、子どもたちの安全・プライバシーと地域の使いやすさを、設計段階から両立させる必要があると指摘してきました。
そして今回、完成した校舎を歩いてみると、音楽室、家庭科室、図書室などを地域開放するには、いくつものシャッターで学校区域を区切る必要があるように見えました。
地域の人が使いやすい、エレベーター利用の問題も、解決したようには見えませんでした。
地域開放の動線は、災害時にも生きる
地域開放のための動線は、災害時にも重要です。
学校は避難所になります。
一方、避難生活が続いていても、子どもたちのために学校教育は再開していかなければなりません。
そのとき、避難者の生活空間を体育館だけに限定するのではなく、学校教育と避難生活を両立させながら、必要に応じて家庭科室や図書室、多目的室なども活用できることが大切です。
そして、避難生活に必要なのは、寝る場所や食事だけではありません。
音楽を聴く。楽器に触れる。本を読む。好きなことや趣味を楽しみ、ほっとする。
そんな時間も、長引く避難生活では大切です。
平時から地域利用できる動線を整えることは、災害時の避難生活の質を高め、学校の早期再開と両立させることにもつながります。
「避難できる学校」だけでなく、「避難した後の暮らしを支えられる学校」にする。
その視点も、学校整備には欠かせないと思います。
約110億円の公共投資を、どう生かすのか
文京区は、柳町小学校を「地域コミュニティの核」「生涯学習等の基盤」と位置づけてきました。
区長も「地域に開放できるよう動線を考慮した設計」と答弁してきました。
それなのに、完成した後になって、
「この設計では難しい」
「管理上難しい」
で、地域開放をこれまで通り、体育館の開放で終わらせるのでしょうか。
約110億円をかけた意味が見える学校という公共施設に
新たに音楽施設、調理施設、学習スペースを地域につくろうとすれば、土地も建物も設備も必要です。
文京区では、土地を確保すること自体が容易ではありません。
一方で、すでに地域には、税金で整備した学校という大きな公共施設があります。
「学校だから学校だけで使う」のではなく、学校教育に支障のない時間には、地域の公共施設としても生かす。
これは単なる「有効活用」ではありません。
地域の人が学び、趣味を楽しみ、人と出会う。
孤立を防ぎ、人のつながりをつくる。
そして災害時には、地域の命と暮らしを支える。
学校の地域開放は、税金の使い方、そして地域の未来への社会投資を考えるうえで、欠かしてはいけない視点だと思います。
学校は、一度建てれば50年、60年と使う公共施設です。
約110億円という公共投資を、子どもたちの学びに。
学校教育に支障のない時間には、地域の学びや楽しみ、交流に。
そして災害時には、地域の命と暮らしを支えるために。
文京区自身が掲げてきた「地域に開かれた学校」を、完成した柳町小学校でどう実現するのか。
約110億円の公共投資を、地域の未来にどう生かし切るのか。
文京区に、しっかり確認していきます。

「地域に開かれた学校」は実現したのでしょうか

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