シリーズ6月議会一般質問~⑤ダイバーシティ

誰もが「わが子が一番!」

それは自然の摂理だと思います。

  • 障害や性的指向・性的自認、国籍などが異なるマイノリティーを身近に感じて過ごすインクルーシブ教育の意義って何?
  • そうした社会的弱者と時間を共にする教育が、わが子に何をもたらしてくれるのか、わからない・・・。

そんな声を聴くこともあります。

でもでも、確実に、多様な人々と共に過ごす環境の中で子どもが教育を受け、人格を形成することは、子どもの将来に大きなメリットをもたらすことです。

例えば…

国は一億総活躍プランを掲げています。では、その「一億」とはどんな人々なのか? その中にはどんな人がいるのか? どこまで多様な人々を想定し、その上でプランを描いて実行できるかが極めて重要です。そうでないと「総活躍」とは言えません。

多様な人々を想定するためには、相当に多様な視点を持っている必要があります。そしてその視点のひとつひとつは、これまでの人生のどこかで「気づき」が得られたかどうかにかかっています。気づいていないことは頭の中に存在しておらず、想定=思い浮かべることができないからです。

気づきを得て、視点を持ち、想像力をフル動員して働かせなくてはなりません。

 

「気づきから得た多様な視点で、自分とは異なる多様性を理解し想定する力」・・・それは社会で生きていく上でビジネスチャンスにもなります。

例えば、職場でコミュニケーション障害のある人とチームになり、一緒に仕事をする機会から得た気づきがあったら、「一億」の中にコミュニケーション障害の人々を想定して、そこにビジネスチャンスを見出す力にもなり得ると思います。

職場で働く、地域で生きる…その中で自分と違いがある人と共に仕事をし暮らしていくという体験からは、この世界には様々な人々がいて、自分と同じように、だれもが尊い存在であり、だれもが幸せになりたいと願って懸命に生きているのだ、という「気づき」を持つことができるでしょう。

このような「気づき」を持つことこそが「ダイバーシティ」であり、そうしたことをベースにした教育の実践が重要だと思っています。

 

文京区は今年度、ダイバーシティ推進担当の所管を作りました。これは、障害の有無や性的指向・性的自認、所得の格差などなど、いかなる「違い」に関わらず、誰もが「生まれてきてよかった」と実感できる区政を目指すものです。

その実現のためには、各事業において、多様な人々を想定し、「違い」によって排除されたり不利益を被ったりする人がいないかを常に意識していくことが大切です。

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かつて、小学生水泳教室では、障害のある子が参加することなど想定されていない事業でした。しかし、昨今では募集に際して「障害(知的・情緒・難聴・言語等支援の必要な方)のある等で、介助者が必要な方は介助者(高校生以上)同伴」と明記され、参加希望者の中には当然、障害のある子もいることを想定するようになりました。 こうした募集は、共に地域で生きる人々に対して、障害がある子どもも参加希望があり参加することもあるのだ、という「気づき」の機会を提供し、ダイバーシティの啓発にもつながることです。

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先日手にしたチラシを見て、とても残念な気持ちになったことがあります。

青少年委員会が、この夏「まなびの合宿」という、2泊3日で参加費2万円の企画の参加者を募集をしていました。八ヶ岳まで連れて行ってくれるので、この参加費は「お得」と受けとめるご家庭もあるでしょう。しかし、子どもから「行きたい」と泣いて頼まれても捻出するのが難しいご家庭もあるのではないでしょうか。

今や子どもの6人に1人が相対的貧困であるという調査結果は広く報道され、多くの方も目にしたところでしょう。また、一例として、厚生労働省の平成23年度全国母子世帯等調査によれば、母子世帯の平均年間就労収入は181万円だそうです。月収にして約15万円。家賃や食費、光熱費、子どもの被服費などの必要経費だけでいっぱいいっぱいなのは明らかです。

文京区教育委員会の今年3月の定例会で、民間の事業から「教育委員会の後援」の申請があったときに、お金を取る事業に対して、はたして教育委員会が後援をすべきか?という疑念について坪井教育委員から以下のような指摘がありました。

「坪井教育委員:

貧困による教育格差の問題というのがこれだけ大きな問題になってきているときに、やはりお金がある子だけが文化に触れられるというようなことではなくて、貧困の中にある子どもも同じようにそうした良質の文化に触れられるように配慮すべきというのは、やはり教育委員会のなすべきことではないかと思います。そういう意味で、今回の後援名義云々だけではないんですけれども、こういう機会があるごとに、貧困の家庭にあってこうした余裕のない子どもたちにも良質な文化をという、その面についてのご配慮を何らか検討いただきたい」

 

当然、教育委員会事務局は、親の所得格差によって子どもの教育の格差はもちろん、体験の格差も是正していかなければならない必要性に、この時「気づき」をもったはずです。

しかし残念ながら、その気づきを青少年委員会に伝えることなく、「想定する力」が発揮されることのないまま、結果として、親の所得格差で参加したくても参加できないという「切なさ」を子ども自身にも親にも突き付けることになってしまっていることは否めません。

気づきを持つことの重要性、裏を返せば、気づきを持てないことによる残酷さを痛感します。

子どもの貧困や障害の有無に関わることだけではありません。

男女平等センターが企画したセミナーのひとつに「男性の家事・育児参加~ともに支えあう関係づくりとその気づき~」というものがありました。 男性の「育児参加」という表現そのものが言葉の選択を誤っています。親である以上、女性、母親同様に父親も当然「当事者」です。

文京区は、「女性は子育て・家事、男性は仕事」といったような性的な役割分担ではなく、各家庭家族の中で決めるべきと考えています。にもかかわらず、結果的に「育児参加」と言う表現をしてしまう。それは、区の気づきが、少なくとも補助金を得て事業を企画する団体に提供されていないということが見えてきます。

上の例にあげた青少年委員会も男女平等センターもきっと「あえてそうした」のではなく、視点がなかったのだと思います。気づいていないということでしょう。 子どもの貧困対策、障害者差別解消法、男女平等参画の推進等々、直接的な区の事業かどうかにかかわらず、事業委託したり、補助金を出している事業については、そうした視点を持って多様な人々を想定できているかどうかを区としてチェックし、抜け落ちている視点があれば「気づき」を提供することの必要性を思います。私も議会人の一人として、気づきを提供できるようにしっかりと審査していききます。

 

一般質問では、これからの施策の基本となる区のダイバーシティに関する基本方針等を質問しました。

 

⑤ テーマ:ダイバーシティ推進について

【一般質問&答弁全文+視点】

 

区役所が、障害者や性的少数者などへの対応を誤れば、それは区民に向けた誤った周知にもつながります。ぶんきょう未来は、性別や障害の有無、人種の違いに限らず、年齢、性格、学歴、価値観などの多様性を尊重し、誰も排除しない社会を目指します。こうした理念を区が施策で実践できているか、ぶんきょう未来はチェックし、男女平等参画推進条例で足りないことを補う差別禁止条例等の提案も視野に入れています。

 

▼Q:LBGTの理解啓発の手引は各現場でどのように活用していくのか?

文部科学省が学校教育で力を注ぐ、LGBTの理解啓発について伺います。

”性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会”から「自治体等において性的指向や性自認に関する偏見や差別をなくし、困難を解決するためのより良い行政サービスの提供、より良い地域社会づくりの促進を目指して、マニュアルを作成するためのガイドラン」が区に提出され、区はこれに基づき区の手引を作成するとされています。作成した区の手引を各現場で具体的にどのように活用していくお考えでしょうか。伺います。

 

A:成澤区長

区が作成するLGBTの理解啓発に向けた手引きについてのお尋ねですが、職員が、人権問題について、正しく理解するとともに、窓口での対応や各事業を検討する際に、指針として活用していくことを想定しております。

 

▼海津の視点:

手引きが活用されたのち、そのことが窓口対応や事業に反映されたかどうかを評価するシステムの導入が不可欠です。「手引を作って配っておしまい」ということにならないようにPDCAサイクルでLGBTへの理解啓発が周知されていくように求めていきます。

 

▼Q:ガイドラインの「教育部門」はすぐにでも使える内容。いつからどのように活用する計画か?

今、性的少数者に関する否定的な発言が学校の教室のみならず、職員室でも少なからず見受けられると聴きます。いじめや当事者の子どもの自死などにもつながりかねないことで早急に先生たちの意識改革が必須です、苦しむ子ども達の心情を考えればまったなしです。

各教員がLGBTに適切な知識をもち、各教室で子ども達にも教えていくためには、今回、区へ提出されたガイドラインの「教育部門」は、先生たちの研修等にすぐに活用できる内容と思いますが、いつからどのように活用する計画でしょうか。伺います。

 

▼A:南教育長

文部科学省は、学校における性同一性障害に係る児童・生徒の状況や、学校等からの質問に対する回答をQ&A形式にしてとりまとめた教職員向けの周知資料である「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童・生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」を作成しております。教育委員会では、この資料を本年4月に各学校へ配付しており、今年度の生活指導主任研修会等で活用することとしております。また、ご指摘のガイドラインの「教育部門」については、今後区が作成する手引きに盛り込まれるとのことであり、区長部局と連携しながら、研修等で活用してまいります。

 

▼海津の視点:

今も学校の中にはLGBTの当事者の子ども達がいます。また当事者の先生たちもいます。各校がどのように手引きや研修を活かし、子どもや同僚の心を傷つけることのないように努めるか校長自身にまずは目標を持たすべきと考えます。

 

▼Q:学校図書館へのLGBTに関する図書の整備状況と子どもたちの反応は?

学校図書館等にLGBTに関する図書を計画的に配置すると昨年の9月の一般質問で答弁をいただいていますが、すでに10ヶ月が過ぎようとしている今、各校の整備状況と子ども達からはどのような声が上がっているか、伺います。

 

▼A:南教育長

現在、教育委員会といたしましては、各学校へ配置するため、関係機関と連携し、図書の選定を進めております。

 

▼海津の視点:

なぜ新年度になっても整備されていないのか?LGBTの子ども達の自殺未遂や不登校などすでに指摘されていることであり、子ども達の心を守るための危機管理意識が希薄であると言わざるを得ません。夏休み明けにはすべての学校に整備されるように求めていきます。

 

▼Q:障害者差別解消法に基づき募集した事例はどのように公開され、どのように活用するのか?

障害者差別解消法で事例を募集しましたが、当事者が差別を受けないための対応を区民にまだ示されていません。個々の事例の対応の仕方に関する見解をいつ、どのように示されるのか、また、この事例集をどのように現場で活用するかの計画をお聞かせください。

 

▼A:南教育長

区では、本年4月の障害者差別解消法の施行に合わせ、職員の行動規範となる職員対応要領を策定いたしました。その策定にあたり、具体的な事例等を収集したものです。本年度は、「障害者差別解消支援地域協議会」を設置し、事例等の情報の共有や協議を通じて、不当な差別的取り扱いや合理的配慮の不提供などの防止に努めてまいります。

 

▼海津の視点:

具体的な事例等を収集した以上、そこにどのような見解をもち、どのように今後対応をするか、当然、区民に示すべきことです。事例を寄せた方たちは、当然、そうした区からの回答が得られるとの思いで寄せたものであります。寄せられた事例に対しての丁寧な見解を公表している自治体もあります。文京区としても、今後、同様の差別を繰り返さないためにも公表すべきであり、求めていきます。

 

▼Q:障害による人権侵害や差別の解決にあたり、ダイバーシティ推進担当を中心に第三者機関による仕組みを作るのか?

障害による人権侵害や差別が解決しない折には、障害福祉課や教育委員会等、ある意味当事者が調査にあたるのではなく、第三者機関が調査し対応にあたるべきと考えますが、ダイバーシティ推進担当が中心となり、その仕組みを作ると理解してよろしいでしょうか。

 

▼A:成澤区長

人権についての意識啓発など、人権全般については、ダイバーシティ推進担当が中心となり、個別の事象については、それぞれの所管課が、誠意を持って相談に応じ、関係機関を紹介するなど、責任ある対応を行います。現時点では、第三者機関を設置する予定はありませんが、今後設置する「障害者差別解消支援地域協議会」の議論を踏まえ、設置の必要性も含め、検討してまいります。

 

▼海津の視点:

「誠意をもって相談に応じ」「責任ある対応」をするとのことですが、そもそもが所管課の対応によって当事者が「差別を受けた」と感じてしまう事例が出ているのが実情です。誠意や責任は当事者が納得いくものでなければなりません。公平公正な視点から協議できる第三者機関の設置は必須です。

 

ダイバーシティ

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