中学校の成績~生徒に納得感はあるか!? 学校によって評定にバラつきも
多くの学校が夏休みに入っています。
成績表が配布されて一喜一憂する子どもやご家庭もあったかもしれません。
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◆先生の評価に生徒は納得しているか!?
特に中学校においては、都立高校等入試に内申が影響することもあり、つけられた評定に納得がいかず、先生になぜ? と質問をぶつける生徒も少なくありません。
生徒の「なぜ」に、先生は、真正面から答えられているでしょうか。
「〇〇が理由で、こうした評定をつけた」と。
次には、「□□すれば評定を上げることができる」と、本人が納得でき、さらに改善すべき目安を具体的に思い描ける説明をすることが欠かせないと思います。
例えば、各教科ごとの評価基準の設定や観点別学習状況の評価の評定について、具体的に生徒、保護者にわかりやすく公表していて、共通認識を測っている学校なら、先生自身がつけた生徒の評定を見せながら「〇〇だからこうなった」と具体的に伝えることができます。
しかし、残念なことに、すべての学校でそうした評価基準が、生徒・保護者に開示、公表されているわけでありません。
生徒が感じる「なぜ」に対して、明確に理由や根拠を提示できる教員ばかりではなく、「もうひと踏ん張り足りない」といった曖昧な応えで終わり、といったことも珍しくないのです。
説明責任が果たされている実感を、生徒・保護者が持てているとは言い難い状況は速やかな改善が求められます。
◆都教委調査結果~評定のバラつき(都623校)
東京都教育委員会は
「学習指導要領の目標に準拠した評価の客観性・信頼性を確保する」ため、都内公立中学校第3学年及び義務教育学校第9学年(12月31日現在)の評定状況の調査を実施し、調査結果を公表しています。
令和2年度のものは、以下になります。
▼公立中第3学年・義務教育校第9学年の評定状況調査結果|東京都 (tokyo.lg.jp) https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/03/25/17.html
【注】
1 上段は令和3年度選抜、下段は令和2年度選抜の調査結果である。
2 四捨五入の処理により、合計が必ずしも100.0%にはならない場合がある。
3 中学校等別教科別の評定状況については、「中学校等別評定割合」(個表)(PDF:495KB)を参照のこと。 https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/03/25/documents/17_04.pdf
◆都教委調査結果~評定のバラつき(文京区)
同じ自治体内の区立中学校でも、評定の割合にはバラつきがあります。
例えば、文京区立中学校全10校中8校の場合は以下の表の通りです。
中学校等別評定割合(個表) (東京都)
<文京区>
<東京都全体版 各区状況は↓こちら>
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/03/25/documents/17_04.pdf
―都内公立中学校第3学年及び義務教育学校第9学年の令和元年12月31日現在の評定(調査書記載の評定)状況― 調査対象623校(中等教育学校、義務教育学校を含む。)のうち調査対象人員が40人以下の学校等を除いた578校
*文京区立中学校は上記に従い10校中8校が報告されており、番号は順不同に並べたものです。
文京区では、評定「1」をどの教科でもまったくつけていない学校もあります。
いっぽう、都教育委員会の調査によると、保健体育で「1」をつけている都平均は2.5%ですが、文京区立中学の中には、7.9%の生徒に「1」をつけている学校もあります。
また、理科についても、「5」を42%の生徒につけている学校と、11.5%につけている学校など、同じ教科でも評定の割合に開きがあります。
◆どの自治体でも学校ごとにバラツキが
文京区立中学校への進学は、学校選択制で区立中学校の中から希望する学校を選択できる制度になっています。
そうした中で、「あの学校は内申がとりやすい」「あの学校はとりにくい」といった情報が、保護者や生徒の間で飛び交うとの話も聞きます。そうした声は、学校選択にも影響がないとは言い切れません。
ただ、都教育委員会が調査した全体の結果をみると、どの自治体でも各校によって評定の割合の違いが出ています。文京区に限ったことではないことがわかります。
「あの先生は評定が厳しい」「●●先生が△学校に移動したから〇学校は内申がとれるようになった」との話は、どの自治体からも声があがるのが残念ながら実態ですが、本来、見過ごしてはならないことです。
◆学習評価を行う上での留意事項
そもそもが、評定は、先生自身の指導力の評定でもあるはずです。
例えば、先生自身、なぜ、「1」をつけるに至ったか、自分自身の指導を省察し、どのように指導を改善すれば「1」を付けずにすんだのかが問われます。 先生自身、どのように指導を改善すれば「1」の評定を上げることができるのかを検討し、次の学期に活かしていくことが必要です。
その一歩目は、生徒自身に「〇〇だから1をつけた。次は□□を改善していこう」「先生もここを気を付けて丁寧に教える」「わからないことはなんでも聞いてほしい」と言ったことを、単に口にすればいいのではなく、生徒に「伝わる言葉」で伝えることから始めるべきではないでしょうか。
令和2年10月 文部科学省初等中等教育局教育課程課 「新学習指導要領の全面実施と学習評価の改善について」 https://www.mext.go.jp/content/20201023_mxt_sigakugy_1420538_002_004.pdf
◆評価の妥当性と信頼性の確保には基準の情報公開を
評価は、子どもの自己肯定感にも大きく影響するものです。学校側が、「信頼できる評価だ」と自己評価するのではなく、生徒・保護者が「適正だ」と納得し、信頼を寄せる評価であるかどうかが、大切です。
そのためにも、各教科ごとの評価基準の設定や観点別学習状況の評価の評定について、保護者・生徒と共有し、学校と保護者・生徒が共通認識を持つことが前提だと思います。
各教科ごとの評価基準や観点別学習状況の評価について、各学校のホームページで公開することも有効です。
まして、文京区では、中学校の学校選択を制度として取り入れているのですから、学習評定についての情報公開は必須だと考えます。できない理由もないと思います。
文科省でも、「学習評価を行う上での各学校における留意事項」として、
「学習評価の妥当性や信頼性を高めるとともに、児童生徒自身に学習の見通しをもたせるため、学習評価の方針を事前に児童生徒と共有する場面を必要に応じて設ける」と明記し、求めています。
◆先生と生徒が評価基準を共有する意義
共通の「尺度」があれば、付けられた評価に対して納得が行かない場合など、曖昧ではなく、客観的で公平な説明が可能になり、生徒の納得感や学習意欲の向上にも繋がると思います。
先生も、曖昧にしか説明できないのは精神的にも「ジレンマ」になっているはずです。客観的で公平な基準に基づいた評価が出来れば、自信を持って説明できるようになるのではないでしょうか。
そもそも、学校における「主体」は「教育を提供する側」ではなく「学ぶ側」です。
であるならば、学ぶ主体である生徒が評価基準を知らされないのは、実におかしなことです。努力目標が不明確なまま努力しなくてはならないようなものです。
生徒自身も、学習評定に納得がいかなかったら、声をあげてぜひ、先生に尋ねてほしいと思います。
それに対して学校は、子どもの声を支え、「先生が合理的、かつ具体的に説明することを保証していくこと」「妥当性がないものは見直しをしていくこと」を子どもたちに明言することが大切ではないでしょうか。
◆教育委員会は学校任せにせず改善を
教育委員会は、学校任せにすることなく、改善を進める段階にあると思います。
それには、まず第一に、「学習評価は妥当、信頼できる」という思いに至っている生徒ばかりではない、という前提に立つこと。
次に、これまで教育委員会がとってきた条件整備だけでは「不十分」であるという視点に立って検証すること。
これらを踏まえて、各校と連携して改善を進めることが重要ではないでしょうか。
各校が、生徒が納得のいく評価規準や評価方法の明確化、生徒から信頼を得ている評価の実践事例の蓄積・共有、さらには、評価結果を通じた先生自身の力量の向上ができるように、前例に捕らわれずに進めてほしいと心から願っています。
子どもたちの「今」に間に合うように。
“中学校の成績~生徒に納得感はあるか!? 学校によって評定にバラつきも” に対して1件のコメントがあります。
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海津さん、こんにちは。ご無沙汰しております。
成績の評定にばらつきがあるのは、中学だけでなく、
大学でもそうです。
大卒の僕だからこそ分かることなんですけどね。
嫌な教授が多くて、全出席でも単位を落とされることが多かったです。
ただの研究者どもが何であんなに威張ってるのか不思議です。