来春から高校「情報Ⅰ」必履修化,大学入学共通テストにも~小中学校からの教育が課題
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◆ 高まる「情報教育」の重要性と課題は!?
来年、2022年度の高校1年生から「情報Ⅰ」が必履修科目化され、すべての高校生がプログラミングやデータ分析を学ぶことになり、これまでの高等学校情報科の内容が大きく変わります。
また、大学入試センターは今年3月、「2025年実施の大学入学共通テストから情報Ⅰを追加する方針」を発表しました。さらには、国立大の入試では情報を加えた6教科8科目案が検討されてもいます。
▼2021年5月24日東京新聞「共通テスト、6教科8科目案検討 「情報」追加、25年から」 https://www.tokyo-np.co.jp/article/106277 ▼2021年3月24日NHK「共通テストに新教科サンプル問題を掲載」 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210324/k10012933181000.html
情報教育に詳しい、中山泰一教授(情報処理学会理事/電気通信大学)にお聞きしたところ、
日本学術会議が2016年に「情報学の参照基準」を、2020年に「情報教育課程の設計指針―初等教育から高等教育まで」を公表し、小学校から高等学校、大学へとつながる一貫した情報教育の体系を示しています。
文系・理系を問わず、大学に入学する時点で情報活用能力を身につけていることが求められます。
国公立大学だけでなく、私立大学でも、入試で情報を課す大学は増えて来ると推測され、日本における小学校から高等教育までの情報教育の位置付けは、今後ますます重要度を高めて行くでしょう。
中山泰一教授(情報処理学会理事/電気通信大学)
とのことです。
すでに昨年度から、小学校では「プログラミング教育」が必修科目となっており、これまで日本が遅れていたとされる「情報」に関する教育の重要度は、今後高まって行く方向にあることは間違いないようです。
いっぽうで、教える側の専門性の問題や、1人1台の情報端末を使った学習環境をいかに生かした「教育の質」が提供できるか否かによって等、児童生徒の学習環境による習得度に格差が生じ、不利益を被る生徒が出かねないことも懸念されています。
◆ 「情報Ⅰ」で学ぶ4領域とは!?
では、どんなことを学ぶのでしょうか?
「情報Ⅰ」では以下の4領域を学習します。
(1)情報社会の問題解決
(2)コミュニケーションと情報デザイン
(3)コンピュータとプログラミング
(4)情報通信ネットワークとデータの活用
具体的には、例えば
「情報デザイン」の授業では、情報を伝える際に、どうしたら受け手が理解できるようになるか、情報整理して、相手の目線にたったデザインを通して、問題の解決を図る力を培っていくことを目指します。
コンピューターとプログラミングの授業では、コンピューターの知識及び技能を学ぶとともに、物事のしくみを理解し、順序立てて考え、幾度もやり直しながら、問題を解決する力を培っていくことも目指すものです。
また、情報を読み解く力、情報から新たな価値を見出す力をデータ活用の授業等を通して培おうとするものでもあります。
情報Ⅰは、総合的には問題が何かを考え、解決する力を学ぶ科目と言われています。
◆ 高校現場からも不安の声が
高校の現場からは、「教員の専門性不足で、内容をきちんと教えることができない学校も出てくるかもしれない」と不安の声があがっていると聞きます。
さらには、高校に生徒が入学するまでに学んできた内容、つまりは出身中学校によって習熟度に差があるとの指摘もあります。
例えば、学習を専門性のある教員が積極的に行ってきた学校と、そうでない学校では、高校入学時点で習熟度に格差が出てしまうことが懸念されています。
上述の中山教授は、
”都立の高等学校でも出身中学校による情報教育の格差があります。中学校で免許外教科担任が横行していては、高等学校情報科の専門性が高まっていく世の中で、不利益を受ける生徒が出てきます。”
と、中学校での免許外教科担任による専門性の問題を指摘されています。
◆ 小学校からの学習の積み上げが重要
すでに小学校では、昨年度からプログラミング教育が必修となり、プログラミング的思考を身に付けることを目指しています。
では、プログラミング的思考ってなんでしょうか? 文科省は次のように述べています。
「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」
わかりづらいので意訳すると、「ある目的を達成するために順序立てて論理的に考え、結果を出していく力」、つまりは「問題解決型の論理的思考力」ということを指していると考えます。
◆ ICT支援員の活用がカギ
中学校では、技術・家庭科(技術分野)でプログラミング教育を実施しています。小学校でのプログラミング教育をさらに発展させる視点が中学には求められています。
しかし、先生方からは、ネットワークを利用した双方向のプログラミングや情報セキュリティについて教えていくことに、自信を持ちきれないとの本音も聞かれます。
文京区では、区立小中学校各校に月8日、1日7時間程度ICT支援員が配置されています。 小学校も中学校も各学校が、この専門性をもった支援員を、どのように活かしていくか、今後大いに問われていくことになるのではないでしょうか。
思い出すのが、スクールカウンセラーが各校に配置された時のことです。
スクールカウンセラーという「学校外」の「第三者」を学校現場に入れて、より多面的に子どもたちを支援していくことが始まりです。
しかし、学校現場では、週に数日勤務するだけで、教員免許を持たないスクールカウンセラーを子どもを支えるチームとして「受け入れる」までに長い時間を費やしました。今でも、その課題は残っていると聴きます。
学校が、配置されたICT支援員を十分に活用し、子どもたちがどのようにプログラミング的思考を身に付けていくか、専門的な視点で個々の段階に応じたアドバイスをしていくことは欠かすことができない視点です。
各校が、ICT支援員を「受け入れる」という思考ではなく、「チーム」として子どもたちの学びを支えていく覚悟を持つことが必須と考えます。
さらには、プログラミング的思考をどのように子どもたちに培っていくのか。
子どもが育つ家庭環境による教育格差が指摘されている中、プログラミング教育でも、そのことを意識し、すべての子どもが学校で学びを深め広げられるように、先生方の一層の工夫が求められていくのではないでしょうか。
今後、先生にむけて、「プログラミング的思考を、子どもを誰ひとり取り残さず、個々に応じて指導できる力が身につく」研修を、教育委員会が提供できるかどうかも重要になると思います。
さらには、子どもたちが「わからない」「教えて」という声を上げやすい、あきらめない、日頃からの環境を学校が意識していくことが、より大切になると考えます。
しっかりと注視していきます。
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