コロナ禍で経費縮減方針の中、区議全員に公費でタブレット一律配布!?

◆ 区議全員?全額公費?同機種タブレット?

文京区は予算編成方針で、コロナ禍を踏まえて 

「経費の見積方針経費については、今後の大幅な歳入減が見込まれるため、新型コロナウイルス感染症対策事業及び重点施策を除き、全ての事業経費について可能な限り縮減するよう努め、各部において2年度当初予算額を超えないよう調整するものとする。」 

としています。 

当然、文京区議会としても時勢を鑑み、経費縮減に努めるべきです。 
にもかかわらず、文京区議会は、議員全員に公費でタブレットを貸与しようとしています。

◆ 議会が作成した(設置)計画書

◆ 計画の目的は!?

上の計画書に記載されている目的は、 

「委員会資料等のペーパーレス化の推進や、緊急時・災害時等に迅速に対応できる議会体制の強化を図る」 

というものです。
そして先日、この区議会のタブレット導入案が区の情報システム委員会で承認されました。 

▼ 情報システム委員会要旨「キ 情報通信端末(タブレット)の導入」

一見もっともな質疑意見に読み取れます。しかし、調べれば、この目的を達成するために、必ずしも同一機種のタブレットを公費で全議員に貸与する必要が全く無いことがわかります。 後に、改めて書きますが、議員の多くは、政務活動費(公費)で情報通信端末を購入し、持っているのです。ともすれば、区民の目からは「タダで新しいタブレットが欲しいだけ」とも取られかねません。

◆ 同一タブレット一斉配布の効果!?

文京区議会は、「同一のタブレット端末を議員全員に配布することによって得られる効果」として以下をあげています。

  • 動作の検証がしやすい 
  • 一律の操作研修が可能となる 
  • 端末操作について、相互に教え合うことをしやすい環境にすることで、議会全体のICTスキルの底上げが期待される 
  • 貸与端末を議会活動専用の端末にすることで、私的利用端末との使い分けができる(端末利用に対する制限・使用ルールの適用が可能になる) 

◆ 「文京みらい」が反対する理由

私たち文京みらいは一貫して、コロナ禍でできるかぎり経費を圧縮する区政方針の中、わざわざ全議員に公費でタブレットを一括配布する必要はないと反対しています。 
なぜなら・・・

  • 昨年4月に行われた選挙で当選をした議員34人中14人が政務活動費でノート型パソコ ン等を既に購入しています(下記)。審議の際に必要な資料等がクラウドで共有され れば、既に購入しているパソコンで十分に閲覧することが可能です。

A議員 iPad(タブレット) 144,738円  パソコン 236,130円 

B議員 パソコン 118,293円 

C議員 パソコン 126,832円 

D議員 パソコン 156,471円 

E議員 パソコン 143,283円 

F議員 パソコン 142,225円 

G議員 パソコン 216,408円 

H議員 パソコン 327,580円 

I議員 パソコン 193,104円 

J議員 パソコン 147,710円 

K議員 パソコン 247,833円 

L議員 パソコン 171,500円 

M議員 パソコン 158,540円 

N議員 パソコン 185,626円

  • 議会全体の「ICTスキル等の向上」のために、さらに公費をかけて同一タブレットを整備する必要性はないと考えます。個々の議員が努力すべきことです。 
  • 単純に言えば、既に政務活動費で購入している議員には、公費でタブレット等を2台配布することになります。議員によっては、ノート型PC+iPadも購入していますので、公費で3台も配布することになります。 
  • 災害時を想定して、どこでも使えるように、とセルラー型タブレットも選択肢に上がっていますが、議会の中では、委員会室にはWi-Fi環境が整備されています。自宅のWi-Fi環境や携帯電話も公費で補助されますので、災害時のためということで、セルラー型端末を導入する必要はないと考えます。 
  • 全額公費で配布したタブレットについて、使用ルールを作って公私の区別をつけるとしても、結果的に、議員のモラルに任せるしかなく、非常に難しい問題です。
  • 4年間のリースで全議員に同じタブレットを配布する計画です。現在の議員の任期は2年後の4月30日までです。議会活動に対してどのような情報端末を使い、議会活動の質を上げるかは個々の議員が決めるべきことで、それを改選後の議員にも強いることそのものにも問題を感じます。

◆ そもそも議員は政務活動費で買える!?

文京区は、「議会活動・議員活動」のみに使用するという理由ならば、議員は政務活動費(公費)を使って、パソコン・タブレットを購入することができます。また、購入費の2分の1であれば、私用でも使えます。 

全額公費で購入したタブレット等を私用で使っていないかといえば、その線引きは各議員のモラルに任せられているのが実情です。 

ちなみに、Wi-Fi環境を自宅に整備するときにも2分の1は政務活動費を使えます。 インターネット回線の契約や携帯、iPadなどの毎月の通信費も2分の1、政務活動費に計上することができます。 

つまり、「議会活動」等をするために「政務活動」という公費でパソコン等を購入している現状がある上に、さらに「議会活動」のためという名目で、全額公費で議員全員にタブレットを配布しようというのです。 

財源はみなさんの税金です。みなさんは、議会活動のためなら、公費で何台も議員にパソコン等を購入してあげるべき、とお考えになりますか?

◆ 他区議会はどうなってる!?

何度も言いますが、全額公費でタブレットを配布する財源は税金です。 
東京23区でも、全額公費で議員全員にタブレットを配布している議会があります。 
一方で、杉並区議会、目黒区議会、新宿区議会は、「サイドブックス」という文章情報共有システムソフトを導入し、あとは、各議員個人が持っている情報端末機器を活用し、全員に同じ端末機器を配布する必要はないとして、配布していません。所有する情報端末では使えない等の個別ケースでは、政務活動費で購入できるようにしています。 

同様に、各個人所有の情報端末機器でペーパーレス化、ICT化を推進してきた議会に取材すると「問題は何も起きていない」とのことです。 

新宿区議会には次のような委員会記録があります。 

「SideBooksという仕組みは、iPadのようなものとかアンドロイド端末みたいなものにアプリを入れることによって見ることもできれば、ブラウザーを使って見ることもできる。いろんな汎用性があるものなので、どういう端末で見るかについての自由度が高いわけです。そのときに、議会のほうから例えばiPadが支給されて、これを持ち歩いてくださいと言われると、逆に使い勝手としてどうなんだろうと。むしろ、自分がふだん携帯している端末、あるいはふだん仕事で使っている端末をそのまま使えるということのほうが利便性は高くないかということがあったのと、あともう一つ、端末を一斉に導入するときの費用がかなり高いだろうというところもあって、それぞれでSideBooksというものを1回見た上で、どういうものを使ってそれを使用していくのかということについて、それぞれで判断いただいて。逆にわからないという方については、SideBooks側で、こういう端末を使うと使いやすいですって恐らくあるはずなので、それを政務活動費等を使って調達してやるほうが効率的なのかなという感じはしたんです。」 

(平成30年12月5日 自治・議会・行財政改革特別委員会より)
https://ssp.kaigiroku.net/tenant/shinjuku/SpMinuteView.html?power_user=false&tenant_id=211&council_id=2491&schedule_id=1&view_years=2018

◆ 「文京みらい」のICT化推進提案

私が所属する文京みらいは、議会のICT化には賛成です。 
「文の京」自治基本条例で定められている区議会の責務(下に記載)を具体化するためにも、文京区議会がICT化を推進するために、以下を提案しました。

※「文の京」自治基本条例 第5章「区議会の責務」より抜粋 

(区議会の責務) 

第21条 区議会は、法令に定める権限を行使し、及び政策論議・立法活動の充実を図ることにより、区政の発展及び区民の福祉の向上に努める。 

(情報の共有と説明責任) 

第22条 区議会は、積極的に情報を提供することにより、区民との情報の共有を図るとともに、区民への説明責任を果たす。 

(区民参加と活性化) 

第23条 区議会は、区民との直接対話の場を設けるなど、区議会への区民参加を推進し、区議会の活性化を図り、開かれた区議会を目指す。 

▼ 文京みらいの提案「文京区議会ICT化整備方針」

目的 

本区議会は、ICT化を積極的に推進し、区民への議会情報の提供、区民との情報の共有、区議会への区民参加の推進、議会活動の活性化・効率化、議員力の向上、緊急時・災害時等に迅速に対応できる議会体制の強化、議会資料調製等に係る経費軽減による行政の効率化などに資することを目的として、文京区議会ICT化整備方針を策定する。 

本方針における重点プロジェクト 

従前から協議が行われてきた情報通信情報通信端末及びペーパーレス会議システムの導入に加え、近年の大規模災害や新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み、緊急時・災害時等において迅速に対応できる議会体制の強靭化を目指した環境整備を中心に、「文の京」自治基本条例に基づいて、以下の事項において検討を行う。 

(1)区民との情報共有の推進 

〇 議会ホームページの見直し 
〇 委員会のインターネット動画配信(ライブ、録画) 

(2)区民参加による議会運営 

〇 議会活動への電子提言 
〇 議会活動の積極的な展開 

(3)ペーパーレス化の推進 

〇 各種会議資料のペーパーレス化 
〇 執行機関との情報の共有 

(4)迅速かつ効率的な情報伝達の推進 

〇 会議・災害時等におけるICTの活用 
〇 グループウェアを利用した情報伝達・情報共有 

(5)ICT環境の整備 

〇 ウェブ会議システムの試行 
〇 情報通信端末の導入並びに使用に関するルールの策定 
〇 議場等のプレゼン機器やWi-Fi環境の整備、電子採決システムや音声文字化システムの導入 

(6)その他 

〇 ICT化における費用対効果の検証

◆ まとめ

ペーパーレス化やICT化は、全議員「お揃い」の情報端末にしないとできないことではありません。 

私自身は、私費で購入したノートパソコンを使っています。あらためて全員同じタブレットを一斉に配布されることには強く反対します。今持っている使い慣れたノートパソコンで十分に対応できます。  

ICT化であるならば、区民に「開かれた議会」を目指すべきです。ところが、区民から出された「議会で開催される予算・決算委員会等のインターネット中継を求める請願」は多数の会派の反対で不採択になっています。多くの地方議会では既に実施され ているだけに文京区は遅れています。全議員にお揃いのタブレットを配布する経費があるならば、それを使って、議会の透明性を高め、予算・決算委員会のインターネッ ト生中継を行い、議事録を即日公開するなど区民との情報共有を推進していくべきで す。

コロナ禍において経費削減を議会自らが示すべき時に、このような公費の使い方に区民のみなさんの納得感が得られるのか?  
そもそも、タブレット導入の予算額さえ区民に開示していません。通信費も公費ですので、購入時だけでなく、毎年継続的にお金がかかります。 

文京区議会と同規模の他区議会の事例から試算すると、セルラー型タブレットを4年間のリース形式で導入すると約1,200万円はかかると推計できます。 また、他区議会は、どのような機種にすべきか等、様々なタブレット導入の検討過程も公開しています。

そのお金でもっと優先すべきことが他にあるのではないか、慎重な判断が求められると思えてなりません。 
ICT化の推進のために、議会が上げるタブレットをお揃いにすることで得られる効果・・・

  • 一律の操作研修が可能となる 
  • 端末操作について、相互に教え合うことをしやすい環境にすることで、議会全体のICTスキルの底上げが期待される

こうしたことは工夫の仕方でいくらでも補えるものです。 
そもそも、選挙で区民の信任を得た議員がその信任に応える議員活動をするために、最低限のICTスキルを身に付けることは、議員の自己研鑽であり、公費=区民の税金でやることでしょうか? 

仮に、ICTを使えない議員に対して、ICT学習教室に通う月謝をみなさんは進んで払ってあげますか?  
国レベルであれば、外務大臣が英会話を学ぶためにお金を出してあげますか? 最低限のスキルを持っていることは、その職務に就く人物の「資格要件=必要条件」なのではないでしょうか? その必要条件であるスキルが時代や環境の変化で不足したならば、磨くのは個々の「自己研鑽」ではないでしょうか。 

見え隠れするのは、区民への「甘え」や「おごり」に感じます。区民からは「甘えではなくたかり」だとの声さえ聞こえてきます。自戒も込めて、区民にきちっと説明がつくICT化の推進を図っていきたいと考えます。

本来であれば、みなさんに、文京区議会がICT化の一環としてペーパーレス化をどのように推進しよ うとしていくのか、議事録をお見せしたり、傍聴をご案内したいところです。 しかし、「今後の議会運営に係る懇談会」という3人以上の議員がいる会派の幹事長と正副議長、議会事務局職員だけが出席した会で、しかも、議事録もない中での議論で決定してきたのが、今の文京区議会です。

新宿区議会、板橋区議会等々のように区民が傍聴できる公の場で、ICT化推進の議論を進めていれば届けることができるのですが、残念です。 
共産党、文京みらいは、ずっと公の場での議論、そして、その過程をHP上でも公開す ることを求めています。が、多数の反対で実現できていないのが現実です。

みなさんはどうお感じになられますか? ぜひご意見をお聞かせください。


*****
以下は、ご参考まで。

◆ 【ご参考】政務活動費とは?文京区議はいくら?

よくご存じでない方へ「政務活動費」について、簡単に説明しておきます。 

政務活動費とは、議員報酬とは別に議員個々に支給される議員活動上の経費であり、文京区のHPには次のように記述されています。 

「政務活動費とは、地方自治法(昭和22年法律第67号)第100条第14項から16項まで並びに文京区議会政務活動費の交付に関する条例(平成25年2月文京区条例第2号)及び同条例施行規則(平成25年2月文京区規則第4号)の規定に基づき、議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、議会における会派又は議員に対して交付される経費です。」 

文京区HPより

ちなみに文京区議会議員の政務活動費は1人当たり月額14万円です。各会派ごとに経理責任者を置き、毎月領収書等を添付した収支報告書を提出する義務があり、会派ごと・費目ごとに区HP上で公開されます。各議員の政務活動費をどのように使用したかは、情報公開を行うとわかります。 

◆ 【ご参考】総務省 政務活動費の対象イメージ


出典:文京区議会「政務活動費報告マニュアル」平成28年4月1日

◆ 【ご参考】文京区 政務活動費執行の原則

出典:文京区議会「政務活動費報告マニュアル」平成28年4月1日

◆ 【ご参考】文京区 政務活動費を充てられない経費

出典:文京区議会「政務活動費報告マニュアル」平成28年4月1日

コロナ禍で経費縮減方針の中、区議全員に公費でタブレット一律配布!?” に対して2件のコメントがあります。

  1. 匿名 より:

    政務活動費が一人月額14万円!!!普通にそれで調達すればいいですよね。コロナによる休校期間中の公立校のオンライン授業が、生徒たち全員が適切なICT環境下にいないという理由でなされなかったのに、議員は無条件に高価なタブレットを配布される(個人が持っていても)というのは、順序が違くないですか。

    1. かいづあつこ より:

      休校中、ご指摘の通り、ICT環境に格差があることから文京区教育委員会が格差を埋めるまで、オンライン授業の実施までに時間がかかりました。
      現状は、タブレットは学校のを持ちかえれても、Wi-Fi環境に格差があるなどを理由に、宿題には利用できないといったことが起きています。

      政務活動費から二分の一、補助される自宅でのWi-Fi環境整備は、実際、家族も利用することもあると思います。。
      ICT化推進に向けて情報端末機が必要な議員は、これまで購入してきたように、「政務活動費」で購入すればいいだけです。

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