待機児童解消~保育の「量」と「質」を確保するには無償化より保育士の待遇改善が先

無償化よりも保育園を望むすべての家庭が保育園に入れるようにしてほしい!

入園できるかどうかの結果が決まる時期、とみに聴こえてきます。

 

文京区では認可保育園の新設を積極的に進め、この5年で定員を約1,600人増やしてきていますが、待機児童の問題はなかなか解決しません。

都市部では待機児童解消の取組み以上に、新築マンション等の建設で子育て世代が増加し、文京区も例外ではなく、0~5歳人口が5年間で約2100人増えている状況です。

 

◆ 一定規模以上の新設マンション内には保育所整備の促進を

そうした事情を解決するために、自治体の中には、新たに建設される一定規模以上のマンション内にはあらかじめ保育所を整備するように「指導要綱」等で誘導しているところもあります。例えば江東区では、「事業者に公共施設の整備に一定の協力金を求めていますが、民設民営の保育所を整備すると協力金を相殺」しています。

 

これまで文京区では、そうした他自治体の取り組みを知ってはいても、新築する一定規模以上のマンション建設事業者と保育所設置の協議をしたところで、「結果的に設置には至らないケースが多い」と冷めた目で見ていたところがあります。

ですが、国が「子育て安心プラン」で遅くとも平成32年度末までの3年間で全国の待機児童を解消する策のひとつに、大規模マンションでの保育園の設置促進が盛り込まれたことを機に、文京区も2月1日より「大規模マンション等の建設における保育施設設置の協力要請を行う」ことにしました。

保育所の待機児童解消を図るため、住戸数100戸以上または延べ面積1万平方メートル以上のマンションおよび総合設計等を計画している事業者を対象に、必要に応じて保育施設の設置について協力を要請するものです。

文京区HP 大型建築物等の建築を予定されている方へ
http://www.city.bunkyo.lg.jp/bosai/tochi/ogatakennchiku-kyougi.html

 

協議で、文京区は事業者に「まちづくりにおける貢献及び周辺地域への配慮」を求めています。待機児童解消に向けて、どれほどの効果が上げられるのか、要注目です。

いっぽう、文京区内の大型マンションの建設事業者の考え方を聴くと、「快適なまちづくりの推進」「地域貢献」といったことは置き去りで、一般社会にある社会常識や倫理感とはかい離したマンション計画が少なからず見受けられます。

あるのは、一にも二にもただただ自社の目先の利益だけ。より良い地域社会を生み出し、地域に貢献する建物を造るという発想は皆無であるかのように感じられます。

それだけに、建ててしまえば、住民が増えたことで待機児童がさらに増えようが、それは自分たち事業者とはまったく関係のないことだと判断するのではないかとさえ思えます。

あるマンション事業者は、「自治体がマンションを購入してくれれば別だけど、自社が部屋を提供しての保育園の設置は考えられない」と話していました。

春日・後楽園駅前再開発

春日・後楽園駅前再開発の現況

文京区役所の目の前で進む、春日・後楽園駅前再開発事業が完成すると、ファミリー向けに約700世帯が入居することになります。当然、保育園の需要増等は気にかかります。

が、区が再開発事業組合に要望したのは、0~5歳の60人定員の認可保育園のみ

周辺の子育て世帯からは、「約270億円の税金が投入される再開発事業なのだから、待機児童解消の受け皿となるように、この機会に十分な保育施設を整備すべきなのに、60人定員の保育園では、さらに待機児童を生み出すようなもの」「タワーマンションを建てるのに税金を使うのではなく、保育園が必要な家庭の子ども全員が入れるように税金を使ってほしい」と疑問の声があがっています。

約700世帯のうち、子どもがどのぐらいの数になるのか? 文京区は、この予測がとても難しいとし、待機児童対策だけでなく、学区域の小学校の教室対策の検討さえ手つかずで、様子見というのが実情です。

物件が建ってからでは、間に合いません

待機児童対策や学校の教室対策を視野に、新たなマンション建設に際して、ファミリー向けの戸数から児童・生徒の需要増をいかに予測して、迅速に手を打っていくか。他自治体や専門家、民間事業者の実例や知恵も借りて、早急にノウハウを身につけるべきではないでしょうか。「予測が難しいから」で止まって良いわけがありません。

これから少なくとも数年間は都心への人口流入が続くと予測されています。マンション建設が計画された時点で、子どもの数を推測し、保育園や学童保育、小学校のニーズを把握し、後手に回らない施設整備を要望していきます。

 

さらには、もっと先の子どもの数が減少していく局面も見据えていかなければなりません。保育園や学童保育を増やしていく際の施設設計には、将来的に高齢者福祉事業等に転換できるような工夫をしておくことが重要です。社会的な変化が起きることが予想されている以上、その都度建替えるのは税金の無駄遣いであり、生産年齢人口が減少する時代の区の財政は、今ほどの余裕はないはずです。

 

◆ 絶対に置き去りにしてはいけない「保育の質」

また、ハード面の保育施設の整備と共に、絶対に置き去りにしてはいけないのが「保育の質」です。

保育園の数を増やすだけでなく、子どもが安心して楽しく過ごせるように、豊かな専門性をもった保育士が子どもに寄り添い、支援していくことによる、高い保育の質が伴うことが大切です。

 

保育園を考える親の会代表・普光院亜紀さんは、

保育士不足による待機児童対策の停滞と同時に、保育士不足による質の低下を指摘され、打開するには、保育士の待遇改善が急務であると言われます。

全産業平均年収が約490万円なのに対して保育士の平均は約327万円と100万円以上の差があり、女性の全産業平均約376万円とも約50万円の差があることから、「他の職種とそん色のない待遇を一日も早く実現することが必要」として、待遇が悪いままだと起こりがちな状況を「魔の悪循環」、待遇が改善すると「量も質も確保する好循環」が起こることを以下の図表にされています。

保育園「魔の悪循環」

量も質も確保する好循環

  • 出典:「保育園を考える親の会」代表 普光院亜紀さん

 

待遇が悪いことで採用難になり、そこから起きてくる問題を示されています。

そして、待遇改善することによって、結果として、一人ひとりの子どもと向き合い、手がかけられるゆとり、子ども個々の身体・心理・発達を理解する専門性、適切な判断・対応ができる経験が保育士に蓄積され、結果、保育の質が向上する。というとても説得力のあるわかりやすい図表です。

 

千葉県松戸市では、2017年10月から、市内の認可保育所で働く保育士に、勤務年数に応じて4万5000円~7万2000円の「手当」を支給しています。

さらには、“子どものいる保育士は、子どもの保育所の入所の優先度も上げ、保育料も安く抑えている。ほかにも新卒の保育士が市内にアパートを借りて保育園に勤める際、家賃の一部(月3万円まで)が補助されるほか、就職の準備にかかる費用の一部も、10万円を上限に就職先の保育園等を経由して支給する。保育士の資格を取りたい人には、受験費用などを最大15万円助成する。学生向けには、一定の条件を満たせば返済不要の貸し付けも用意した。”そうです。

「松戸手当」って何? 保育士への待遇がTwitterで評判
http://www.huffingtonpost.jp/2018/02/02/matsudosaraly_a_23351758/

ここまで高待遇を打ち出せば、保育士を目指す方が「松戸市」を選択肢と考えるようになることも頷けます。国の動きを待たずとも、自治体で出来ることの好例ではないでしょうか。

これからは、「待機児童数」だけでなく、財政的にゆとりがある自治体かどうかで「保育の質」の格差が顕著になってくるかも知れません。

 

文京区では2月9日から区立保育園の一次募集の選考結果が発送される予定です。

保育園に子どもを入れて働く…そうした選択に対して「入園選考」という高いハードルが設けられ、結果的に取りこぼされてしまう人々を生み出す社会は、けっして生きやすい社会とは言えません。

希望する家庭の子どもたち全員が入園できるように「量」を確保する。と、同時に、そのために絶対に置き去りにしてはいけないのが「保育の質」です。

児童の安全や成長を担保するのが「保育の質」であり、これを大きく左右している一因が「保育士の低待遇」であるならば、国がさらに改善に取り組むべきです。保育の「量」と「質」両面において、非常に意義のある施策であり、税金の使途としても、価値のある将来への投資と言えるのではないでしょうか。

保育の無償化の前に、保育士の待遇改善は待機児童解消に向けてやるべきことのように思えてなりません。

保育の質

 

 

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