令和7年9月文京区議会本会議質問(2/3)

前回に引き続き、2/3をUPします。

9月11日に私、海津敦子が本会議で一般質問を行いました。
区長・教育長それぞれへの質問と、それぞれの答弁を一問一答形式に編集して共有します。
また、各答弁に対する「海津の考え」も付記しました。長いので、3回に分けて投稿して行きます。
ぜひ、お時間のある時に、ご興味のある項目をご覧の上、区長・教育長の考えにご注目頂き、ご意見を聞かせて下されば嬉しいです。

8. 海津質問

放課後の安心・安全な居場所をつくる「アクティ」は、補食の提供や18時半までの延長など、小学6年生までの多様なニーズに応える大切な事業です。けれども、改築を終えた誠之小、改築中の柳町小・明化小、小日向台町小の基本設計いずれにも、アクティの専用事務室や荷物置き場は設けられていません。廊下にブルーシートを敷いて荷物を並べる――その状況が今も続いています。

子どもの安全を守る事業に、拠点となる事務室すらない。連絡や記録管理など、運営の土台が確保されていなければ、安心して活動できる環境とは言えません。

子どもの権利条例の理念と、学校設計との整合性について、教育委員会の見解を伺います。

また、アクティ事業の質を支えるために、今後の学校設計で専用スペースをどう確保するのか、方針を伺います。

8. 教育長答弁

アクティの実施に当たっては、特別教室のほか、体育館や校庭を含めた複数の場所を利用しているため、専用の諸室を確保する考えはありません。今後の実施設計の中で、アクティの職員の事務室の確保について検討してまいります。

8. 海津の考え

教育長は「特別教室などを活用している」と答弁しましたが、廊下に荷物を置く現状は「活用」ではなく「我慢」です。放課後の安全と育ちを支える職員に事務室もない状況は子どもの権利条例の理念と矛盾しています。アクティは福祉でも教育でもある「生活の場」です。

設計段階で専用スペースを確保することはぜいたくではなく、最低限の責任です。制度の枠に子どもを合わせるのではなく、子どもの日常に制度と設計を合わせる視点が必要です。

9. 海津質問

条例素案には、「子どもが自ら考え、遊び、学ぶ環境づくり」と書かれています。けれども、文京区のこども園では、乳児は1階、幼児は2階と分かれています。2階からは園庭が見えず、行き来もしにくい構造です。区立保育園でも「保育の目が十分に行き届かない」という課題が指摘されています。


子どもが「外で遊びたい」と思ったときにすぐ出られる構造。室内と園庭が視覚的につながる構造。それは「遊びの自由」と「安全」を同時に保障するものです。

こうした視点を欠いた設計が今も残っていることについて、設計基準の見直しを含め、今後の方針を伺います。

9. 区長答弁

これまで、保育所については、限られたスペースの中で子どもが安全に楽しく過ごし、より良い保育ができるよう、保育現場をはじめ、関係部署で協議を重ね、保護者にも意見を聞きながら、設計を行ってまいりました。


 今後とも、大規模改修等を行う際は、子どもの気持ちに寄り添いつつ、安全・安心な環境で質の高い保育が提供できる設計となるよう努めてまいります。

9. 教育長答弁

幼稚園型認定こども園の諸室の配置については、運営上の安全面や、災害時の危機管理など、多角的な観点から適切に設計を行っているものと認識しており、認定こども園においては、バルコニーやテラス等のスペースを設けるなど、一定の広さを確保した設計としております。

今後、改築や大規模な改修を行う際には、子どもの気持ちに寄り添いつつ、園をはじめ、関係各課で協議を重ね、保護者に意見を聞きながら、安全・安心な環境で質の高い保育・教育が提供できる設計となるよう努めてまいります。

9. 海津の考え

区長・教育長ともに「安全面を考慮している」と述べましたが、問題は安全だけでなく「遊ぶ自由」と「見通しのある構造」です。2階から園庭が見えず行き来しにくい設計は、子どもの主体性を奪います。

遊びの権利とは、危険を避けることではなく、自ら環境を使いこなせる自由のこと。現場の声を反映した設計基準の見直しが急務です。

保育施設のデザインを「管理のしやすさ」から「子どもの視点」に転換するべき時期に来ています。

10. 海津質問

育成室や児童館も、もうひとつの「家庭」であるべき場所です。

ところが、小日向台町小の基本設計で示された育成室や児童館は、地域の児童数増加を考えたとき、広さとしてはまだまだ足りず、遊びが制限されざるを得ないのではないかと考えます。

ただし、校庭や園庭をどう使うか、空間設計や動線の工夫によって遊びは広がります。

現状の課題と、今後の改善について伺います。

10. 教育長答弁

現在の児童館及び育成室においても、限られたスペースで、職員の創意工夫により様々な遊びを提供しているところです。

 育成室については、令和10年度に小日向二丁目国有地内にさらに2室整備し、一定の待機児童の解消を図る予定ですが、小学校改築後においても、遊びが制限されないよう、校庭の有効活用などの検討を進めてまいります。

10. 海津の考え

教育長は「職員の工夫で遊びを提供している」と述べましたが、創意工夫に頼る運営は限界があります。空間の狭さは、子どもの行動を制限し、遊びの質を下げる要因です。ハード整備を怠ったままでは、いくら工夫しても本来の成長の場にはなりません。

校庭の活用や室内の可動壁など、設計で「広がり」をつくる発想が求められます。遊びは学びの根です。計画段階から「遊びの空間」を位置づけることが、子どもの権利保障の出発点です。

11. 海津質問

いま学校には、不登校、発達特性、ICT支援、家庭の困りごと――さまざまな課題が山積しています。

だからこそ、スクールソーシャルワーカー、OT、ST、ICT支援員、学校司書など、多様な専門職が連携する「チーム学校」が必要です。

けれども、直近の小日向台町小の基本設計でさえ、相談室や作業室が不十分です。教室に入りづらい子どもの居場所も、ただ「とりあえずスペースを確保した」という程度の広さです。

担任だけでなく、多様な専門家がチームとなって、個々の子どもの学びを支えるには、とても十分とは言えません。

「チームで支える」、「チーム学校」の実現を掲げながら、設計に反映されていない。この矛盾をどう受け止め、どう改めていくのか。教育委員会の考えを伺います。

11. 教育長答弁

小日向台町小学校の改築の設計にあたっては、職員室、講師室、校長室をひとつのまとまりとして配置し、教員とスクールカウンセラー等がより連携できるようにしております。 

また、保健室や職員室との連携が取りやすく、他の児童との動線が重ならない位置に校内居場所(別室)を配置しております。 今後とも、児童・生徒が抱える困難の早期対応・解決に向けて、「チーム学校」として、ハード面の充実も図ってまいります。

11. 海津の考え

教育長は「職員室や別室を配置した」と説明しましたが、それは最小限の対応にすぎません。

多様な専門職が協働する「チーム学校」には、相談・記録・連携のための専用空間が不可欠です。

物理的な距離は、情報共有の壁にもなります。現場の支援は人の熱意に頼るのではなく、設計と配置によって支えられるべきです。

発達特性や不登校など課題が複雑化する今こそ、「支える側を支える空間整備」に踏み出すことが、教育の質を守る鍵です。

12. 海津質問

猛暑もあり、文京区立の小中学校では、夏休み中や2学期の水泳指導を中止する学校がほとんどです。プールを使うのは年間で20日程度。学校プールの在り方は今後、検討すべき課題です。

それでも小日向台町小の基本設計では、屋上にプールを常設し、消防用水の名目で水をため続ける構想になっています。しかし消防用水は、校庭の地下に貯水槽を設けることで代替できます。

限られた敷地だからこそ、子どもたちの多様な学びを保障する空間や地域利用、防災に直結する使い方を優先すべきです。また水泳指導は近隣の中学校やスポーツ施設を活用するなど、「どうしたらできるか」を検討すべきと考えます。

12. 教育長答弁

学校運営に支障のないことを前提として、防災、地域開放等も考慮した設計としており、引き続き、限られた敷地を有効活用しながら多様な学びを可能にする学校施設を整備してまいります。 

なお、現時点では、区内のプール施設のキャパシティ、施設への移動手段の確保などの課題を考慮すると、外部施設を活用した水泳指導は困難であるため、小日向台町小学校にプールの設置は必要と考えております。

12. 海津の考え

教育長は「外部施設活用は困難」と述べましたが、限られた敷地で屋上にプールを常設する合理性は乏しいと言わざるを得ません。近隣の区立中学校のプールも活用は十分に可能です。

安全・維持費・気候変動の観点からも再検討が必要です。年間わずか20日しか使われない設備に多額の予算を投じるより、日常的に活用できる多目的空間に転換すべきです。

消防用水や防災機能は他の方式で代替可能です。学校は「子どもたちの未来を形にする公共施設」である以上、柔軟で持続可能な設計が求められます。

13. 海津質問

学校は災害時に避難所となります。だからこそ、避難所の「質」が命を守るカギになります。

直下型地震では避難生活が長期化します。命を奪うのは揺れそのものだけではありません。ストレスや持病の悪化による「災害関連死」が多く報告されています。


にもかかわらず、小日向台町小の基本設計では、避難所となる体育館が地下一階にあり、自然光も風も入りにくく、外の景色も見えません。これでは長期の避難生活にとても耐えられません。

避難所の質を高める設計は、災害関連死を防ぐための具体的な命の対策です。本来、最初の設計から当然、組み込まれるべき視点ではないでしょうか。

13. 教育長答弁

災害発生時に避難所となる体育館につきましては、地下へ設置する計画ですが、外部からの採光や通風を十分に確保するほか、空調機や非常用発電による照明等を導入するため、適切な居住環境を確保できるものと考えております。災害関連死の防止に資する避難所に必要な機能等については、区長部局と協議してまいります。

13. 海津の考え

教育長は「採光や空調で居住環境を確保」と述べましたが、地下空間の閉塞性は照明や空調で補えるものではありません。長期避難を想定するなら、自然光や外の景色といった心理的安定要素こそ不可欠です。災害関連死を防ぐには、設計段階から「健康を守る環境条件」を組み込むことが必要です。避難所は単なるスペースではなく、人が生き延びるための生活環境です。

防災と建築設計を切り離す従来の発想を改め、命の視点から再設計すべきです。

14. 海津質問

学校は子どものためだけでなく、地域の公共施設でもあります。放課後や休日を使って、どう地域利用をつくるか――これは現代の学校設計に欠かせない視点です。


しかし小日向台町小の基本設計には、その発想がほとんどありません。明化小や柳町小も同じです。他自治体では、体育館や校庭だけでなく、図書室や音楽室、家庭科室なども地域に開放し、学びや交流の拠点にしています。

100億円を超える公費を投じて学校を建てるのなら、地域開放を拡充する設計にすべきではないでしょうか。なぜ、文京区の設計は、他自治体にくらべ、遅れているのでしょうか。

14. 教育長答弁

小日向台町小学校の改築にあたっては、地域開放に配慮した施設配置や、動線の確保を行っており、他自治体に比べて設計の考え方が遅れているとは認識しておりません。 

地域開放については、学校運営に支障のないことが前提であり、他自治体の事例も参考にしながら研究してまいります。

14. 海津の考え

教育長は「地域開放に配慮した配置」と答弁しましたが、他自治体が実現している図書室や音楽室の開放にはほど遠い現状です。答弁からの聞き取りをしたところ、文京区の学校施設建設が地域開放について情報収集をすることなく、文科省も推奨する平日の放課後等も開放する認識を、そもそもが持っていませんでした。地域と学校の境界をなくすことは、防災・教育・交流のいずれにも効果があります。学校を地域の拠点として設計する発想が欠けている限り、100億円を超える投資も「閉ざされた公共施設」に終わります。安全を理由に制限するのではなく、どうすれば地域に開けるかを共に考える――これが区民と行政の協働の第一歩です。

15. 海津質問

大塚小では、児童数増加で増築をしたにもかかわらず、児童数がさらに増え、教室はぎりぎりの状況です。しかも近隣の健生病院跡地にはマンション計画があります。それにもかかわらず、教育委員会は「大塚小は余裕があるので大丈夫」と言います。

しかし教育委員会はこれまでも「大丈夫」と予測してきましたが、その予測は大きく外れてきました。では、今回の「大塚小は大丈夫」という判断は、これまでと何が違うのでしょうか。

一方、改築をしたばかりの誠之小では、図書室が書庫と化し、職員室もすでにいっぱいです。学級数分の教室は確保できても、改築時に学校・保護者・地域・教育委員会が願った「新しい時代の学びを実現する教育環境」は、教室確保のためにほとんど失われてしまいました。今後、どうするのでしょうか。

こうした状況は他の学校でも起きています。

子どもたちの「今」に応じて、多様な学びを展開できる空間をどう確保し続けるのか。その視点こそが必要ではないでしょうか。

15. 教育長答弁

区立小学校の教室数が増加している要因として、35人学級の制度化が挙げられますが、令和7年度までに全学年での対応が完了したところです。 

これまでも年少人口の動態や児童数を注視し、周辺のマンション建設等の動向も加味しながら、必要となる学級数の推計を行い、その結果をもとに、既存校舎を最大限活用して、必要な教室を確保してまいりました。
 

大塚小学校においても、学級数の推計に基づき、普通教室の確保ができており、安定的な学級運営ができているという点については、これまで整備を行ってきた他の区立小学校と同様であり、考え方に違いはございません。 

今後も児童・生徒数の増減を注視し、学校や地域の意見を反映しながら、限られた敷地を有効活用し、多様な学びを展開できるよう努めてまいります。

15. 海津の考え

教育長は「普通教室を確保できている」と述べましたが、教室数の確保は教育環境の最低条件であって、質の指標ではありません。子どもたちが主体的に学び、探究できる空間――それが本来の教育施設です。

図書室が書庫化し、特別教室が圧迫される現状を放置すれば、創造的な学びは育ちません。人口動態の予測だけに頼るのではなく、子ども一人ひとりの学びの多様性を軸に再設計することこそ、教育委員会の使命です。

*****

最後に、、、
ここに記載した質問は、事前に区へ提出したものです。本会議質問では、質問に与えられた 30 分に収ま るように、下線部分以外は、読み上げていない箇所もあります。答弁は、事前に出した質問《ここに記載 した内容》を元に作成されています。

▼議会中継(録画)は以下からご覧いただけます

https://bunkyo-city.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=649

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