なぜ「35人学級の拡充」を進めないのか!? 都教委の回答に愕然!

新たな時代を担う子どもたちの育成に向けて、

「教員の負担軽減と教育の質の向上のため、多様かつ重層的な取組を講じてまいります」

小池都知事が、2月に行った施政方針演説で明言していることです。

5月24日には、教員OBや地域の住民らが登録する「人材バンク」を作って、部活動を指導する外部人材の紹介や事務の代行などにあたる「一般財団法人 東京学校支援機構(略称:TEPRO ティープロ)」を設立し、来年度から支援活動をスタートすると発表しました。

東京都 報道発表資料
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/05/24/23.html

新しい試みとして、教育の質の向上にもつながれば、子どもたちの「今」と密接に関係があることだけに、より良くなることを願わずにいられません。

 

しかしながら・・・ 

小池都知事が言う「教員の負担軽減と教育の質の向上のため、多様かつ重層的な取組」の中に、「全学年での35人学級の推進」は入っていない実態が見えてきました。

今回は、東京都教育委員会への質問から得た回答や、文京区の状況を交えながら、公立小中学校の「全学年35人学級」推進の現状と、必要性を考えてみたいと思います。

 

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文京区議会では、平成28年2月議会に、「文京区独自に、小中学校の全学年で35人学級を実現を求める」請願が提出され、自民党・公明党を除く会派の賛成で採択されています。

ですが、区の請願についての対応は、できないことを並べたもので、未だに35人学級の拡充は進んでいません。

採択された請願への区の回答がこちら↓です。

https://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0113/8576/gian_54.pdf

  • 施設面の制約から学級増への対応が厳しい。
  • 教員の配置は東京都。区独自の採用となると人事管理上の課題がある。
  • 義務教育については国の責任が大きいため、国や都の動向を注視していく。

たしかにどれもクリアしていかなくてはならない課題です。「そうだよね、現実的には難しいよね」と思われる読者の方もいらっしゃるかも知れません。しかし、国や都、区の未来を担っていくのは子どもたちであり、そのために様々な「力」を培って行く子どもたちの「学習する権利」という観点に立てば、どれも「おとなの事情」に過ぎません。できない理由を並べるのではなく、「最善の教育」を提供しようと決め、知恵を絞り、労力もお金もかける。少なくとも、その努力を惜しまない。それが、私たちおとなの「未来への責任」ではないでしょうか。「子どもたちへの教育は、私たちの未来をつくること」に他なりません。

 

例えば、東京都は小学校2年生は35人学級を実施していますので、学年に78人の児童が在籍していれば、35人学級で3学級、担任は「26人」の児童を受け持つことになります。ところが、3年生以降は40人学級ですので、2学級になり、担任が受け持つ児童は「39人」です。受け持つ児童が26人か39人かは、とても大きな違いがあります。

新規採用が増えている現場の状況下で、教員歴が数年しかない担任が、40人近い多様な子どもたちと向き合うことには、課題が多々指摘されています。また、先生たちの中には40人近い子どもたち一人ひとりと丁寧に向き合う時間が取れない苛立ちからか、怒鳴り散らしたり、暴言などの力で子どもを押さえつけるような指導をしてしまう人も少なからずいます。

文京区内のある学校では、GW前までに3人の新規採用の先生が退職してしまいました。退職の理由はわかりません。離職する教員が後を絶たない現場の状況の中、各教員の役割が増えていることも離職の一因とされており、担当する児童生徒の数を減らすことは、教員の負担を減らし、余裕を持った指導が可能となります。子ども一人ひとりの個性や知的好奇心に応える指導ができれば、子どもたちは学ぶ楽しさを身に付けられます。教員の負担軽減だけでなく、子どもたちの利益になることとしても、十分に有効と考えられます。

 

学校現場が以前から望んでいることは、働き方改革としても、教育の質の向上としても、最上位は「全学年での35人学級の推進」です。

学級にいる子ども一人ひとり、つまずいているところもそれぞれ、家庭状況も様々です。学校現場は、配慮を要する子ども、いじめや不登校、保護者等への対応・・・日々、多様な課題に迫られています。国が基準とする40人を下回る「35人学級」を全学年に拡充することは、担任が子どもたちに丁寧に向き合っていくための教育環境整備として欠かせません。

実際に、毎年、東京都公立小学校長会、東京都特別区教育長会から、「小学校3年生以降の加配による35人以下学級の推進」に向けての要望が出されています。理にかなった非常に納得できる要望です。特別区長会も、「少人数学級の早期拡充を求める要望」を国に対して行っています。

また、平成27年度全国都道府県教育長協議会の調査では、全国の、小学校3・4年生で約55%、小学校5・6年生で約40%の県において、国の標準を下回る人数の学級編制が実施されている現状把握と共に、多くの都道府県において、少人数学級の取組が進められてきたことで「児童・生徒の積極的な授業参加」「教員の配慮を要する子供に対するきめ細かな対応」など、学習・生活両面で成果が見られる、との調査結果が報告されています。

【H27.研究報告書】少人数学級や授業革新及びチーム学校の推進のための教職員体制の在り方について
https://tinyurl.com/kyouikuchoukyougikaichousa

 

こうした調査結果や、東京都公立小学校長会、特別区教育長会等からの要望が毎年出されている状況にもかかわらず、東京都教育委員会は、35人学級の推進に消極的です。チームティーチングの活用や少人数指導への加配にとどめています。
OECDの調査によると、加盟36ヶ国の平均が21人の学級規模と比べて、日本は2番目に大きな学級規模であり、かつ、日本の教員は最も長時間勤務をしていることが明らかになっています。

児童・生徒数が増えれば、人数に応じてやることも増えていき、長時間労働になるのは当然のことです。

 

国際派?と言われる小池都知事なのに不思議です。35人学級を推進するための予算措置をなぜしないのでしょうか??子どもの最善の利益を守る東京都が、子どもにとって「暮らしの中心」となる学校の学級規模を改善しようとしないのは、残念でなりません。

そこで、「都民の声」から、都知事、教育長あてに、「35人学級の拡充を進めない理由」を質問してみました。東京都教育庁地域教育支援部義務教育課小中学校担当から、回答が以下のように届きましたので、ぜひ、ご覧ください。

(質問)

現場の校長会等から要望がありながら、なぜ、小学校3年生以降の35人学級の推進をしていないのでしょうか。全国でも6割近くの県で小学校3年生以降、35人以下学級が推進される中、教育委員会が小学校3年生以降に「35人以下学級を推進しない」具体的な理由を教えてください。

(回答)

都教育委員会は、学級の生活集団としての教育効果を考えた場合、児童・生徒がお互いに切磋琢磨し、社会的適応能力を育むために、一定規模が必要であると考えています。

今後の学級編成の在り方については、教育の機会均等や全国的な教育水準の維持の観点から、国の責任が大きいと考えており、引き続き国の動向を注視してまいります。

 

(質問)

これまでの要望に対しての検討をいつ、どのように教育委員会でなされたのか、検討した議事録等もお示しください。

(回答)

各団体からいただいた要望等については、関係部署において適切に対応を行っており、打合せする際の記録は作成しておりません。

 

「都教育委員会は、学級の生活集団としての教育効果を考えた場合、児童・生徒がお互いに切磋琢磨し、社会的適応能力を育むために、一定規模が必要であると考えています。」

35人以下学級を推進すると、どうして、切磋琢磨し、社会的適応能力を育めないのか???・・・疑問符が消えません。まったく回答になっていないと感じませんか?

繰り返しになりますが、全国的な教育水準を見ても、すでに47都道府県中55%の県で、小学校3年生以降の35人以下学級が実施されています。 「国の動向を注視していきます」と答えていますが、日本の首都である東京都として、このような全国の現場の状況を、どう見ているのでしょうか?

「教育の機会均等や全国的な教育水準の維持」を理由に、東京都の教育の質を高めようと努力しないのは、先に述べたように、未来を担う子どもたちへのおとなの責任を放棄していることと同じです。言うまでもなく、低いところに合わせるのではなく、最善を目指して、率先して取り組むべきで、低いところに手当てして、全体の底上げを行うのは国の責任です。

いずれにしても、「新たな時代を担う子どもたちの育成」として、学校現場が毎年最上位で要望している「35人学級の推進」に対して、議事録もないほどの検討レベルとは、驚愕しました。

 

文京区内の学校現場からも、35人学級の推進を望む声が多々聴かれます。

また、文京区立小学校では、区内への転入人口の増加に伴い児童数が増加しており、教室不足が深刻です。増築等も視野に入れて教室確保を検討していかなければなりません。その中では、当然、小学3年生以降の35人学級への拡充を想定して検討することが重要です。

もちろん、将来的に児童数が減少に転じた時に備えて、時代のニーズに合わせて用途を柔軟に転換できるような施設設計を行なうことも欠かせません。

35人学級の拡充を実現するかどうかは、学校施設の整備にも大きく影響します。

東京都には、日本の首都としても、国の動向を待つのではなく、「教員の働き方改革と教育の質の向上を同時に実現するモデル」として、率先して国に示すような役割を形に示して欲しいと思います。35人学級の推進を文京区議会としても要望していきたいと思います。

 

最後に。

東京都教育委員会には、「国の動向を注視していきます」という、「指示待ち」の姿勢ではなく、「自ら考え、自ら動く」姿勢に、ぜひ変わって欲しいと切に願います。主体性や能動性を重視するアクティブラーニングを推進する東京都教育委員会として、それこそが、子どもたちに見せるべき姿ではないでしょうか?

 

なぜ35人学級は進まないのか?

なぜ「35人学級の拡充」を進めないのか!? 都教委の回答に愕然!” に対して2件のコメントがあります。

  1. T.T. より:

    この数年、わが子の通う小学校で若い先生が突然、休職、退職することが珍しいことではなくなっている気がします。残念なことです。。。
    区教育委員会、都教育委員会は、現場の先生方がやりがいをもって働ける環境を本気で作る気があるのかなと心配です。
    先生方の負担は結局、子どもたちに影響するわけですし。。。引き続きの発信をよろしくお願いします❗

    1. 海津敦子 より:

      ありがとうございます。感じられている状況は私も同様に思います。
      都・区教育委員会が「やりがいのもって働ける環境」を本気で作る気があるのか、私も一番、危惧するとことです。
      先生にとっても、子どもにとってもより良い環境を皆さんと共に考え、議会で提案をしていきます。今後もよろしくお願いします。

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