10月スタート!幼児教育・保育の無償化で心配される「保育の質」をいかに担保するか!?

10月1日から消費税率が10%に引き上げられ、同時に、幼児教育・保育の無償化(3~5歳児・0~2歳児住民税非課税世帯)が始まります

9月20日(金)に開催された文京区議会文教委員会では、幼児教育・保育の無償化に向け改正する必要がある条例はすべて「可決すべきもの」として全会派が賛成しました。

 

子育て支援を手厚くしていくことの方向性は、間違っていないと思いますし、そのことに異論はありません。しかし、現状でも、生活保護世帯は実質無償化が図られ、低所得世帯には負担軽減がなされている中、保育士の処遇改善や人材不足等、山積する課題を解決しないままでの無償化は「今なのか?」という疑問が残ります。

今回の無償化は、高所得世帯が一番大きなメリットを受けるだけで、かえって課題解決から遠のくのではないか、と心配が尽きません。

 

◆ 変わらぬ保育士の低賃金~無償化には処遇改善が大前提

待機児童の解消に向けての認可保育園の増設、子ども一人ひとりに寄り添った保育の実践には、人材確保が欠かせません。

認可保育園の最低基準の保育士確保で運営せざるを得ない私立保育園では、毎日ぎりぎりの保育士で回していることから、病気で休むことも難しく、産休や育休をとれないこと等から退職者も多くなると聞きます。

保育士資格を有する人たちが魅力を感じて応募するようにするためにも、低く抑えられている給与の処遇改善は喫緊の課題です。現場からも、さらなる処遇改善の要望は絶えず出されています。

◆平均月額給与

私立保育園(全国平均) 23万9300円

全産業の平均月額    33万6700円

厚生労働省 平成30年賃金構造基本統計調査結果 
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2018/index.html 

 

ところが、国が示した「保育士宿舎借り上げ支援事業」といった処遇改善のための補助金制度は、当初に示されたものは令和2年度で終わる設計です。

委員会で質疑をしたところ、「今のところ国からは、来年度でこの制度を続けるともやめるとも示してきていない」とのことです。

保育園の運営には補助金が続くかどうかは大きな問題です。こうした処遇改善策が安定的に届くこと、さらには、いまだに低く抑えられている保育士の給与を、全産業平均レベルになるように処遇改善をするなど、無償化の前にすべきことがまだまだあるはずです。そうした具体的施策何も示されないままの無償化では、とても安心できません

国や都が処遇改善制度安定的にさらに拡充を図るように、区として要望すると共に、保育園運営事業者が不安に陥ることのないよう情報共有を図ることを重ねて求めました。

 

◆ 保育士が確保できなければ無償化しても保育園は増やせない!?~公立私立の賃金格差も

無償化で入園希望家庭が増えても、保育士の処遇が改善されず、保育士の人材確保ができなければ、新たな認可保育所の開設は困難を極め、待機児童がさらに増えることになりかねません。

独立行政法人「福祉医療機構」が昨年行った調査では、全国約1000の保育所と認定こども園の3割で保育士が不足。そのうち子どもの受け入れを制限している施設も1割近くあり、無償化で入園希望者が増えても、十分に受け入れられない恐れがあるのです。

保育士の給与は公立・私立の間でその差が大きく開いています。私立保育園の保育士確保の困難さに比較して、公立保育園の保育士募集は大変な倍率になります。給与が大きく影響する証ではないでしょうか。

 

また、公立で子ども園を開設した場合には、幼稚園教員と保育士の給与が、同一労働でありながら格差が生じます。文京区では、1歳児から5歳児まで一貫した方針に基づき、発達段階に応じた教育・保育を実施する幼保一元化施設である柳町こどもの森では、幼稚園教諭と保育士の給与に違いがあり、改善を求める声があがっています。

文京区立幼稚園・保育園

に勤務する幼稚園教諭と保育士の40歳の人たちそれぞれに、この9月支払った平均支給総額を比較すると以下のようになります。

幼稚園教諭 45万9,379円

保育士   36万7,953円

一カ月だけで、約9万1,000円の開きになります年収にすると賞与も含め130万円程度の格差があるのではないでしょうか。

 

改築が予定されている柳町こどもの森、明化幼稚園、後楽幼稚園、湯島幼稚園は、改築後に認定こども園に移行することが決まっています。幼稚園教諭と保育士の給与格差が解消されなければ同一労働同一賃金が求められる昨今にあって仕事へのモチベーション低下等の影響が出る可能性も否めません。改善を引き続き求めていきます。

 

◆ もっとも気がかりなのは?~置き去りにされる認可外施設の「保育の質」!? 

今回の無償化で、国の基準を満たさない認可外施設の「保育の質」が置き去りにされやしないか、もっとも気がかりな点です。

国は無償化に伴い、対象施設を認可外施設も含めると共に、認可外については、子どもの安全と保育の質を最低限守るために必要な人員配置・設備などを定める「認可外保育施設指導監督基準」を満たしていない施設等についても、基準を満たすまでに経過措置期間として5年間という猶予を与え、その間は無償化の対象とする、と当初示しました。

ですが、安全と保育の質が担保されるか危惧する声が高まり、国は、自治体ごとに条例で無償化の対象とする施設等を決めることができる修正を行った経緯があります。

世田谷区は、経過措置期間を令和3年3月末までと1年半に短縮しています。

文京区は、国の基準である5年間の猶予期間のままでいきます。文京区内の認可外保育施設(企業主導型含む)は25施設。そのうち14施設が国の認可外保育施設指導監督基準を満たしていない施設です。

文京区は、5年間何もしないのではなく、認可保育園化も視野に入れて相談にのっていくこと、また、「保育の質は担保しつつも、ハード面の基準を満たすことができないというような施設もある」として、基準を満たしていないからといって、「保育の質をすべての園が担保できていないとは考えていない。」とのことです。

確かに、そうした面はあるかも知れません。しかし残念ながら、認可外保育園の基準よりも厳しい基準がある認可保育園でも、すべての園で、保育の質が担保されているとは言い難い厳しい現状もあります。

 

◆ では「保育の質」と「安全」をどうやって担保するか!? 

重要なのは、認可外保育園は、最低限でも指導監督基準を満たすこと、認可保育園化を進めること。それと同時に、行政の責任として、子どもの「今」の「保育の質」をどう担保し、安全性を担保するかです。

認可・認可外保育園にかかわらず、第三者機関による評価を文京区HPで見られるようにすることも大切です。そして、評価基準を保護者にも開示して、保育に対して「〇〇について疑問をもってもいいのだ」「相談をしていいのだ」という視点を養ってもらうことも重要だと考えています。

文京区は現在、退職された保育園長等が巡回指導を実施している状況ですが、認可保育園だけで公立私立合わせて80はあり、指導すべき園は数限りなく今の人員では不十分です。今後、基準を満たさない認可外保育園までも含め継続的に評価・改善のPDCAサイクルを回して行くのは難しいのが現実です。

 

また、特別な支援が必要な子どもたちも増えています。 先生が、子どもに伝わらない叱り方や指導で保育を行えば、子どものすこやかな成長を損なうことにもつながります。 その子を理解し、子どものできること、好きなことを伸ばし、その子のできないことには配慮・支援して、自己肯定感を育むには、保育士だけでなく専門家等とチームを組んでの個別保育計画が欠かせません。臨床心理士、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士等々の専門職によるアセスメントを実施し、個々に応じた具体的なアドバイスのもとで保育を行うことが子どもの心、育ちを守っていきます。

文京区が3年後に計画している児童相談所を開設すると、認可外保育施設の指導権限も移管され、認可外保育施設に対しても指導を強化していかなければなりません。

保育の質を担保するための指導には、認可外保育施設にも行政が専門家チームと共に積極的にかかわっていくことが必須です。

 

◆ 無償化だけでなく、「保育の質」と「安全」を担保するために予算を! 

巡回指導の退職保育園長たちだけでなく、専門職の人材養成と、さらには、各施設に直接出向いてアドバイスができる専門職の人数を増やすことです。

「回っています」「指導してきました」という事実(巡回した園の数)だけではなく、その後に、子ども自身が、周りの大人・友達を信じ、何より自分を好きでいて、のびのびと安全に楽しく過ごす毎日が積み重ねなっているかどうか(結果としての成果)を、しっかり確認できなければなりません。そのためには、専門家を含む巡回指導のスタッフの人員増が必須です。専門性の育成には時間もかかります。来年度予算でしっかり対応することを要望しました。

 

◆ さらには、子育て家庭の課題の早期発見と支援に繋ぐ「予防的福祉」の仕組みを! 

今後は、学校にスクールソーシャルワーカーを導入したように、認可・認可外保育園の両方に、そして、幼稚園・こども園にも、ソーシャルワーカーの巡回を求めていきます。予防的観点からも支援を必要とする家庭等が、早期からソーシャルワーカーとつながり、福祉サービスなどに適切に結びついていく仕掛けになると考えます。

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区報ぶんきょう9月10日号
https://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0183/8935/kuhou9.25.pdf

幼児教育 保育の無償化


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