休校延長で子どもの学びはどうなる?家庭頼みの学校は義務教育の崩壊か!?

新型コロナウィルスの感染拡大の中、休校を継続する自治体は4割を超えるとの報道があります。 もちろん、それもまた、子どもたちの命を守る、感染拡大につなげない、大切なことです。 

ただ、同時に子どもたちの学びの保証をどのようにしていくのか、とても重要な課題です。 一斉休校によって浮かび上がった問題は多岐にわたりますが、今回の記事では「子どもの学びの保障」に焦点を絞って綴ります。

オンライン学習等のICTの活用推進は、様々な家庭環境を見据えているか?

学校によっては、学校で使用していたタブレットを子どもたちに持たせて、オンラインで授業を行う学校も出てきています。また、民間の様々なオンライン教材を活用して学習を補完していく動きもあります。 

いずれも肝要なことであり、もともと学校教育でICT化を推進していこうとしていた流れからすると、今やらずにいつやるのか、とも思います。   

しかし、家庭ですべての子どもが等しくICT教育を受けることができるのか?懸念が拭えません。 

学校は、特に義務教育は、どのような家庭に生まれた子どもであっても、等しく教育を提供するためにあるものです。 教育基本法にも次のように明記されています。 

(教育の機会均等) 

第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。 

2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。 

3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。 

子どもは育つ家庭を選べません。置かれた家庭の環境は様々です。 

そうした中で、インターネットのオンライン上の教育を進めることで、取りこぼされる子どもたちがいます。そのことに対しての対策がないことが非常に気にかかります。インターネット環境がない家庭はどうすればよいのでしょうか? 

文部科学省は、子どもが学校で使っているタブレット等を持ち帰れるように、各教育委員会がモバイルルーターを貸し出し、小中学生がいる低所得世帯のインターネット環境整備を支援する方針とのことです。しかし、毎月の通信費は各家庭負担です。月々4000円前後になるだろう通信費は低所得世帯にとって継続して支払うことの負担感はぬぐえないのではないでしょうか。 

また、オンラインではない家庭学習であっても、家庭環境によっては難しいケースがあるのも気がかりです。 

家庭学習で子どもの「教育を受ける権利」を保障できるのか?

文科省が指定都市教育委員会等に発出した事務連絡「新型コロナウイルス感染症に対応した小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における教育活動の再開等に関するQ&Aの送付について(3月 26 日時点)」のQ&Aには以下の記載があります。 

https://www.mext.go.jp/content/20200327-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf

問18 臨時休業中に発生した児童生徒の学習の遅れについて、文部科学省としてどのように学習保障のための施策を講じているのか。  

文部科学省としては、令和2年3月 24 日付け事務次官通知において、今般の一斉臨時休業に伴い、児童生徒が授業を十分に受けることができなかったことによって、学習に著しい遅れが生じることのないよう、可能な限り、令和2年度の教育課程内での補充のための授業や教育課程に位置付けない補習を実施すること、家庭学習を適切に課すこと等の必要な措置を講じるなど配慮するよう、各教育委員会等に依頼しています。 

では、実際にどのようなことが行われるのでしょうか? 

文京区では、先月の臨時休校時には、担任等が教科のプリントを出して家庭学習を要請し、プリントの解答チェックは本人や保護者がしていました。 GW明けまで再開が延期された今回の休校期間中も同様なのでしょうか?  

例えば、子どもが自宅でプリントに取り組んでいて、わからない箇所があった場合を考えてみてください。親が子どもに教えるのは非常に難しいものです。学校の先生でさえも「我が子には冷静さを失うから教えられない」との話をこれまで多く聴いてきました。 ましてや、子どもに付きっきりで学習を教えるだけの時間的、精神的ゆとりをもたない家庭も少なくありません。 

プリントを渡しただけでは「教育の機会」を提供したことにはなりません。ましてや、プリントの解答チェックを本人や保護者に求めるのは、教育を家庭に丸投げしていると言えます。 

臨時登校日などに、子どもがそれまでにしてきたプリントをチェックして、間違っていればそれを丁寧に教える時間を持つ。まして、ドリルの答えを映しているだけの子どももいるかもしれません。そうしたことも想定し、子どもの学習状況を確認することは、学校で授業をできない今においては不可欠ではないでしょうか。 

「もしかしたら、休校中に教えてはいけないのかも?」とふと思いました。基本的に休校中であり、実家への疎開等で登校しない子どももいることから、すべての子どもへの「教育機会の均等」の観点から、学校が授業や指導をしたくても出来ないのかも知れないと思い至り、文部科学省に問い合わせてみました。 

担当者の回答は、「あくまでも家庭で学習したものの学習状況の確認をするのは学校が基本であり、間違えていたら教えることも当然です。」とのことでした。各学校には当然のことをしっかりとやって頂くようにお願いします。 

元文部科学省事務次官の前川喜平さんからは「先生は課題を丁寧に添削指導すべきで、その際には通信制高校の教育の手法を取り入れると良い」とアドバイスを頂きました。 たしかに、毎日の登校を前提としない通信制高校の教育ノウハウはおおいに参考にすべきだと思います。 

 

また、プリントをやって来なかった子どもがいれば、なぜやれなかったのかを丁寧に汲み取ることも重要です。日頃から文科省が求めていることとも合致します。 

本人の努力以外の家庭の問題等であれば、本質的な問題を探り、解決のために関連機関と連携して、教育機会を確保する努力をする。自治体は、そのための環境整備のために財政支援を行う。 これらのことを自治体や教育委員会、学校が約束し、「学校に来られなくても、お子さんの学習は学校が保障しますよ」という姿勢で実際に取り組むことこそが、公教育=学校の役割です。 教育の機会均等から考えても必須だと思います。 

厳しい言い方をすれば、これらが出来ないで、各家庭の努力を前提にするのであれば、そもそも学校は必要ありません。 

家庭に丸投げの教材提供だけでは、義務教育の「子どもの学び」を保障できない!

上記で紹介した文科省のQ&Aには以下の記載もあります。

問45 4月以降にも臨時休業を実施する場合、児童生徒の学習に著しい遅れが生じることのないよう、どのような方策が考えられるか。 

4月以降にも臨時休業を実施する場合、臨時休業期間中に児童生徒が授業を十分に受けることができないことによって、学習に著しい遅れが生じることのないよう、可能な限り、家庭学習を課す等の必要な措置を講じるなど配慮いただくようお願いいたします。特に、臨時休業が長期にわたり、令和2年度の教育課程の実施に支障が生じる場合には、主たる教材である教科書に基づく家庭学習を臨時休業期間中に課すよう、工夫いただきたくとともに、児童生徒の家庭学習が円滑に進むよう、学校及び児童生徒の実態等を踏まえて、教科書と併用できる適切な教材を提供いただきたいと考えています。また、文部科学省においても、児童生徒の円滑な家庭学習を支援する教材等を「子供の学び応援サイト」に随時掲載しており、本サイトを活用いただくことも考えられます。 

また、家庭学習を課すことに加えて、各学校が児童生徒の学習状況の確認や補習等の学習指導を適切に行うとともに、生徒指導、児童生徒等の健康観察を適切に行う観点から、児童生徒等や学校の実態に応じて登校日(授業日を含む。以下同じ。)を適切に設定することも考えられます。その際には、例えば、児童生徒等を分散させて登校させ、人が密集しない環境を確保する等、最大限の感染拡大防止のための措置等を講じてください。 

また、登校日以外の日においても、児童生徒の学習状況の確認等のために家庭訪問を行ったり、体調面にも配慮した上で特に配慮を要する児童生徒など一部の児童生徒については登校させたりするなど、きめ細かな対応のための工夫を行うことも考えられます。ただし、その際、教職員の勤務負担が過重にならないようにするとともに、児童生徒及び教職員の健康管理についても十分に留意する必要があります。

繰り返しになりますが、学校は、どのような家庭に生まれた子どもであっても、等しく教育を提供するためにあるものです。そのために義務教育はあるのだと考えます。 

今はまるで全員が不登校状態~教育機会確保法の理念で学校・家庭以外の学習の場を!

2017年2月に施行された「教育機会確保法」では、不登校の子どもに対して、学校以外の教育機会を確保する施策や財政支援を国や自治体の責務として求めています。 

考え方によっては、今はまるで全員が「不登校」のような事態です。 この法律の考え方に沿えば、今の休校時の学習においても、家庭に限らず、感染拡大の防止を施した上での学習の場を整備し、子どもたちの「教育を受ける権利」を保障していくのが、国や自治体の責務であるはずです。 

ちなみに、「教育を受ける権利」は、日本の最上位の法律である憲法の第26条に明記され、すべての国民に保障されている権利です。 

休校中の預かりから取りこぼされる通常学級の支援が必要な子どもたち

特別支援学級在籍の子どもに対しては、学校で預かるなどの施策をとっていますが、特別な支援が必要な子どもは、通常学級にもいます。 

以下には、知的障害のない発達障害のある子の数は、掲載されていませんが、通常学級には、知的障害、知的障害のない発達障害、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由・病弱など、特別な支援が必要な子どもたちがいます。 

▼ 都内区市町村立小・中学校の状況(東京都インクルーシブ教育システム調査・研究事業報告書より) 

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/special_needs_education/files/report/1.pdf

通常学級に在籍する特に配慮を要する子どもの家庭もまた、特別支援学級在籍の子どもの家庭同様に、学校がないことによってストレスが生じ、我が子との関係で様々な問題を抱える家庭は多々あります。ですが、そうしたことに対しての支援策はまったく見えてきません。

学校という「逃げ場」を失い、在宅でDV被害を受ける親を目の当たりにして心理的虐待をうける可能性も

配偶者・パートナーが在宅勤務になったことで、衝突が増えることも想定されます。もともとDVがある家庭であればなお深刻です。そこで、自治体に求めたいのは、自宅以外の「逃げ場」を提供するということです。 

学校という居場所が失われた状況で、家庭にいなければならない子どもの置かれた様々な状況を、自分の体験からの想像ではなく、子どもが生きづらい家庭での時間を想像の射程を広げて考えなければならないと思います。 

学校を休校にするにしても、家庭以外で感染防止の対応を図った居場所をしっかりと提供することが重要です。子ども自身が自分の判断で行ける場所で家庭でできない学習をしたりゲームをしたり、本を読んだり等、自分なりの過ごし方ができる、かつ、自分に合った場所を選べるような「家庭以外の居場所」の情報を提供することです。 

その際には、行政が問題を把握している家庭の子どもだけでなく、すべての子どもたちに対して、「家庭以外で選択できる居場所があること」を確実に届けることが重要です。

想像の射程が短く、一度決めたら再考しない、変えないお役所文化の意識改革を!

学校が休校になることで、見えてきた様々な課題に関して、「できない」「それは難しい」と、「やらない理由」を上げつらねるのではなく、子どもたちの「教育を受ける権利」やそもそもの「子どもの最善の利益」を守るために、「どうしたらできるか」と知恵を絞り、結集していくことを要望していきます。 

「新型コロナウィルスで命は守られたけれど、勉強がわからなくなった」「親から暴言を浴びせられ続けた」といったことで、コンプレックスやトラウマなど、子どもたちの今後の人生に影を落としてしまうことのないように・・・ 

  

【ご参考】
4/2付文京区教育長から区立幼稚園・小中学校保護者への通知文書

https://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0196/0499/2020421264.pdf

 


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